公害弁連第37回総会議案書
2008.3.23  諫早
【6】 公害関係資料
〔諫早湾関係〕
−弁護団声明−

諫早湾干拓農地リース事業に関する公金支出差止住民訴訟判決について

2008年1月28日
よみがえれ!有明訴訟弁護団

 本日、長崎地方裁判所は、財団法人長崎県農業振興公社が諫早湾干拓農地の一括配分を受け、これを農業者にリースする干拓農地リース事業に対し、被告長崎県は公金を支出してはならないとして、原告ら長崎県民が提起した公金支出差し止め住民訴訟において、原告ら長崎県民の訴えを不当にもしりぞける判決を言い渡した。
 そもそも諫早湾干拓事業は、計画当初から、農地造成目的そのものに合理性のないことが厳しく指摘されていた。問題となった干拓農地リース事業は、工事が完了したものの、営農をする農業者が集まらないことによって、その指摘の正しさが裏付けられることをおそれた農水省と長崎県が、なんとか強引に農業者を集めようとして考え出した苦肉の策であった。このような策を弄さなければ、農業者を集められない農地造成目的の諫早湾干拓事業には、合理性も公共性もない。
 被告長崎県による今回の公金支出の本質をみることのできない本日の判決には、なんらの説得力もないといわなければならない。
 しかしながら、この不当判決においても、本件公金支出は、「実施要綱の要求を満たすような使用処分計画を作成できるのかという疑問が生じる。」とし、営農成立が確実に見込まれるか否かについて、「被告の主張は自己に有利な事情を誇張し、自己に不利な事情を軽視しているといわざるを得ず、経営収支総括表のとおり、営農が成立することが確実に見込まれるといえるかには相応の疑問が残るといわざるをえない。「これまでの干拓農地の実績やこれに対する行政監察の結果等に鑑みれば、本件干拓農地における営農が被告および国の現在の想定どおりに実現するとの見込みを信用することができない。」と指摘せざるをえなかった。
 この公共性なき干拓事業によってもたらされた有明海異変という深刻な環境破壊によって、有明海の漁民は不漁に苦しみ、自殺者や廃業者が後を絶たない深刻な状況に追い込まれている。
 有明海異変の主要な原因は、諫早湾を締め切る潮受堤防である。その排水門を開放して、少しでも被害を軽減し、国がサボタージュしている中長期開門調査に途を拓くことは、被害者漁民のささやか、かつ、切実な要求である。
 すでに、仮に本件干拓農地全域において営農が行われるとしても、調整池に変わる農業用水の代替水源が他に存在し、また国が強調する防災効果も、開門方法の工夫によって潮受堤防排水門の開放とは矛盾しないことすら、明らかになっている。逆に、アオコの大量発生や、いつまでも保全目標を達しえない水質のため、調整池は、農業用水として適さないばかりか、今後とも莫大な公金浪費の対象とならざるをえない。開門を否定する根拠は、いまや、どこにもない。
 本日の判決の不当性を厳しく糾弾するとともに、国は一日も早く、潮受堤防排水門を開放すべきであると、改めて強く訴えるものである。
以上
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