【2】 各地裁判のたたかいの報告(基地騒音)
〔3〕 普天間基地爆音訴訟
弁護士 加藤 裕
1 6年目にしてついに結審
2002年10月に那覇地裁沖縄支部で提訴した本訴訟は、2007年4月12日の第18回弁論から9月6日の第26回弁論まで、集中的に証拠調べを行い、去る11月1日に最終準備書面を提出するとともに、全国の空港訴訟弁護団から応援弁論をいただき、事実上結審となった。その後は、原告らの居住経過や防音工事実績等の個別事情の事実関係のすりあわせなどを行い、形式的にも2008年1月31日に結審した。
この間の証拠調べは、次のとおりなされた。
- 被害の実態について
原告本人9名
- 子どもたちに及ぼす影響について
保育園副園長・小学校教諭
- 行政の立場から
安里猛宜野湾市副市長
- 沖縄の集落形成過程(危険への接近への反論)
石原昌家沖縄国際大学教授
- 沖縄県健康影響調査について
平松幸三京都大学教授・松井利仁京都大学准教授
- 危険への接近について
原告本人9名(被告申請)
- 現場での騒音測定の検証
証拠調べでは、他の訴訟でも展開された航空機騒音の深刻さとともに、特に、訴訟継続中に発生した沖縄国際大学へのヘリコプター墜落事故に見られるような現実の事故に対する恐怖や、またヘリ基地特有の低周波騒音被害などについても立証を尽くした。
本訴は、今年6月26日に判決が言い渡される予定であるが、「世界一危険な基地」とまで言われる普天間基地の危険性と被害の実態に、裁判所が真摯に取り組んだ判決がなされることを期待したい。
2 普天間基地閉鎖への展望
普天間基地の閉鎖を巡る問題は、この1年の間にも根本的な展望が見えないまま、様々な動きが推移してきた。
日米両政府が進めようとしている名護市辺野古崎でのV字滑走路案については、2007年8月に、沖縄防衛局から環境影響評価法に基づく方法書が公告縦覧され、具体的な建設への歩みが始まった。これに対して、方法書そのものが事業内容を隠蔽した不十分なものであること、また環境影響評価手続前から現況調査と称して現場海域での環境調査が実施されてきていることなどから、国のやり方に大きな批判が起こっている。同手続に基づく知事意見の提出にあたっては、同年12月及び本年1月の沖縄県環境影響評価審査会の2回にわたる答申において厳しい批判が盛り込まれ、後者の答申では、方法書そのものを出し直すよう意見が書き込まれた。これらは環境影響評価手続の不備を批判するものではあるが、沖縄県民の批判を無視して何がなんでも2014年に完成させるという国のタイムスケジュールに向けて強行突破しようとしていることに対する強力な反撃となっている。
他方、伊波洋一宜野湾市長は、普天間基地が、米海軍及び海兵隊が国内で定めている安全指針をあてはめると、滑走路周辺のクリアゾーン(利用禁止区域)・APZ(事故危険区域)に学校や住宅が密集している状態となっており、国内基準が海外基地に適用されていないことを訴えており、このような点に対して、対米訴訟を提起する可能性も模索している。
普天間基地爆音訴訟も、普天間基地からの被害をなくすのが目的であり、地裁での審理結審後は、新たな取り組みを検討していきたい。