【2】 各地裁判のたたかいの報告(大気汚染)
〔3〕 尼崎道路公害訴訟の報告
43号線の交通規制とロードプライシング
尼崎道路公害訴訟弁護団
弁護士 羽柴 修
1 子年・元旦早々の騒動
「湾岸線 無料化提案へ 公害訴訟和解で国交省に県警 大胆な誘導必要」
〜尼崎国道43号大型車規制〜
(1) 地元神戸新聞 子年元旦の一面トップ記事である。この報道によると、
「尼崎公害訴訟の和解に基づく国道43号線の交通規制方法で、料金格差を設けて車両を阪神高速湾岸線に誘導する「環境ロードプライシング(ロープラ)について、兵庫県警が大型車の通行料を無料化する方策を、国交省に提案する方針で調整することが31日分かった・・・」ということである。ん・な重要なことが、どうして暮れも押し詰まった31日に「分かった」ことになるわけ。実は弁護団も、松原告団長もこの記事、元日はおろか暫く目にすることがなかった。こんな記事が出たよと教えてくれる人もいなかった。元旦一面トップ記事という取扱なら、31日大晦日であろうが何だろうが、当事者か弁護団に裏取りすんでないか・・と息巻いても後の祭り。
(2) この間の経緯を説明しておきます。大阪高裁和解、公調委のあっせん合意に基づき、交通規制の追加的検討依頼が警察庁にされることとなっていたが、漸く、昨年6月7日の第24回「連絡会」で追加的検討依頼文書が国交省から提案され、意見交換を経て翌7月6日付で膨大な調査資料とともに警察庁に送付された。その後、9月28日に検討依頼に関する進捗状況を確認するため、兵庫県警に交渉を申し入れたが、県警は警察庁からの資料も膨大であり、鋭意検討中であるというのみで、今後、いつ頃に結論を出せるか分らないし、言えない。それでは弁護団も原告団も困るので何度も、県警には作業状況を確認するためお邪魔すると伝えていた。2回目の県警との面談日が08年1月15日に設定され、その調整をしていた矢先に件(くだん)の神戸新聞の元日記事を知ることとなった。情報収集に問題があったのは否定しようがないが、兵庫県警交通規制課のこの問題をめぐる動きは、マスコミも重大な関心があるところであり、9月28日の県警との交渉後、この記事を書いた記者にも経緯をレクチャーしている。どうして記事を書くにあたり、弁護団や原告団に取材がなかったのか不明である。松原告団長の談話らしきものが掲載されているが、本人は元旦記事に関する取材を受けたことはなく、前記昨年9月28日の会見時の談話であるということであった。
(3) この元日の記事については、県警も前日30日に内容の概略を把握していたようであり、神戸新聞の記事内容は根拠のないこと、ミスリードになるから慎重に対応されたい(報道するな)と申し入れたようである。しかしながら、この記事は県警交通規制課への取材から明らかになったようであり、県警がリークした可能性も当然のことながら否定できない。1月15日の県警との交渉でもその点に関する釈明を求めたが、県警は、現時点でそのような、即ち、湾岸線を無料にするような提案をする訳がない(記事は嘘)とコメントするのみであった。
(4) 環境ロードプライシングを充実させるためには、湾岸線の料金を最低でも半額程度にすることと同時に43号線の交通規制、即ちナンバー規制又は、車線規制による湾岸線への強制的誘導が必要であると「連絡会」で国交省に提案してきた。湾岸線を無料にするという大胆な施策がほんとに実行されるのなら勿論、検討の余地はある。ただ、兵庫県警・警察庁が交通規制について、安易にできないと結論を出すのではなく、検討過程を明確にし、かつ、規制する場合の問題点について納得できる検討結果が示されるべきである。本年15日の兵庫県警との交渉で弁護団と患者会・原告団は、元旦の記事に関連してそうした申し入れをしたが、それ以外に、この記事のような交通規制の可否のみではなく、現在の43号線の汚染実態を踏まえて、大型車を削減する現実的方策を提案・提言することがあるのかと聞いたところ、そういう提案・提言を規制の可否検討結果と合わせてすることはあるとのことであった。この騒動は今後の大型車削減について県警が情報操作をした疑いが濃厚ではあるが、規制可否の検討結果と併せて、「連絡会」に県警が出席して前記提案・提言について意見交換ができるようなことになれば捨てたものではないかもしれない(県警交通規制課はこのことは否定しなかった)。
2 昨年の「連絡会」の概要と環境ロードプライシング
(1) 昨年、2007年は2月22日の第22回連絡会から、10月25日の26回連絡会まで5回の連絡会が開催された。環境ロードプライシングの充実化については、大詰めを向かえていたが、正直大きな前進があったとは評価できない。前年度報告では43号線の大型車3万9,557台のうち、9,000台25%を削減する方向で意見交換してきたが、国交省は原告側提案を否定しないものの、阪高の距離別料金体系の実施時期と財源問題を理由に昨年12月21日の最後の準備会まで、充実化実施時期について明言しなかった。ただ、①所謂料金大型車のみではなく、全大型車を対象とする ②湾岸線東線の割引対象区間を拡大する ③料金割引(収受)システムを検討する という3つの課題を検討課題とすることについては合意されている。
(2) バリアフリー問題について
東本町、五合橋交差点、出屋敷交差点の3か所で歩道橋を新たに建設する工事が進められているが、現在は測量から設計段階に移った。連絡会と準備会で意見交換が行われているが、各交差点の南北合計4か所のエレベーター建設場所、現状の歩道橋の利用方法、新たに建設する歩道橋を汚染物質(排気ガス)の暴露からどう遮断するのかという技術問題で意見交換が続けられている。これについても幾つかの問題が出てきており、予断を許さない状態が続いている。引き続き、公害弁連の皆さんの支援をお願いする次第である。