【6】 公害関係資料
〔諫早湾関係〕
−市民抗議声明−
諫干完工式典に当たり、4県県民有志の怒りの抗議声明
2007年11月20日
有明海4県県民有志
諫早湾が潮受け堤防で締め切られて10年、有明海異変と漁業被害の原因を諫早干拓事業と認めず工事の強行を重ねてきた農水省と長崎県は、本日「国営諫早湾土地改良事業完工式典」を実施し、祝杯をあげるという。われわれ、4県県民有志は、有明海の自然環境と有明海の漁業とその地域を破壊した農水省と多くの長崎県民の税金をこのムダな事業に投入し、長崎県民の暮らしや福祉を切り捨ててきた推進派・長崎県に対し心から怒りの抗議をする。
農水省は、自ら作り、当時の農水大臣がノリ第3者委員会の提言を守ると約束した「中長期開門調査」を実施することを拒否し、有明海異変の改善対策は諫干抜きの覆砂事業や海底耕運事業など対症療法を続けてきた。締め切られた堤防による潮流の鈍化と調整池からの汚濁水の流出により、赤潮の多発と貧酸素を作り出し、有明海の海底はヘドロ化が進み、日本で一番生物多様性豊かな宝の海・有明海が、現在正常な生物の住めない「死の海」になろうとしている。
今年8月下旬からの潮受け堤防外でのアサリとカキの斃死は近傍の漁民に大打撃を与えた。島原半島沖から熊本にかけて魚介類が極端に減り、漁船漁業と採貝業者は生活できない事態に追い込まれている。これらは明らかに調整池からの汚濁水の排水である可能性が強い。ところが農水省は諫干が原因であるとの因果関係が明らかにされていないとして、漁業被害の補償も拒否している。
この間アゲマキは絶滅し、タイラギもほとんど取れない事態が続き、ワタリガニやクルマエビなども激減している。有明海の豊かな魚介類が市場にも出ない深刻な事態になっている。ノリは養殖で人為的なノリ漁民の必死の努力で何とか取っているのが現状である。このような有明海漁民の苦しみの上にたって完成した諫干の完工式を祝う農水省と推進派の行動に、4県漁連が不参加を表明したのは当然である。
造成した農地はリース方式にし、50件程度の農業者が入るという。長崎県はそのために35億円の税金を投入する。一部の農業者だけを優遇し、一般の農業者と差別し、とりわけ有明海の漁民は見殺しにする農水省と推進派長崎県を絶対許すことは出来ない。調整池と干拓地での農業を続ける限り、有明海異変は一層深刻になり、有明海から近いうち漁民と関連業種がなくなる可能性が強い。
有明海の自然環境と漁民にとって「有明海再生」は、待ったなしの緊急課題であり、そのためには排水門の開門以外改善の方法はない。農業と水産業に責任を持つ農水省が諫早干拓地農業だけしか考えず、有明海と漁民を切り捨てる、本日の完工式に怒りの抗議をするとともに、有明海と有明海の地域の再生のため緊急に開門することを強く要求する。