(3) 昨年8月26日の佐賀地裁仮処分決定から約9ヶ月の工事ストップにより,農水省のめざしていた2006年度中の工事完成は不可能になりました。この結果,2006年度中には,諫干は,再度の時のアセスにかかります。これまでの経験からして,時のアセスは2006年4月から,そう遅くない時期に行われるでしょう。農水省は時のアセスは事業に影響がないなどと強がりを言っていますが,これを嫌ってしゃにむに2006年度中の工事完成を目指していたのは農水省です。事業を再度見直すチャンスです。これとからめて中長期開門調査や事業の中止を求めていく運動には,正当な根拠があります。
(4) 裁判がはじまって2年半の間,たくさんの漁民が運動に結集してきました。支援の輪も広がりました。今回のマスコミ報道をみても,漁民側の敗訴決定であるにもかからわず,すべての報道はわたちたちに味方しています。国の言い分が認められたのではないだとか,中長期開門調査を実施すべきだとかの論調ばかりです。この間の取り組みを通じて,わたちたちは以前にも増して力強い世論の応援を得ています。
わたしたちは,以上の到達点に確信をもって更に運動を進めたいと思います。
因果関係については,まもなく公害等調整委員会の原因裁定の結論が出ようとしています。
ここで漁民側が勝利すれば,今回の福岡高裁の判断はくつがえります。
公害等調整委員会は,もともと公害・環境問題の紛争を専門的に解決するために設けられたものです。なかでも原因裁定は,科学的な専門分野である因果関係の認定については,裁判所による十分な審理がむずかしいために設けられた手続です。原因裁定は裁判所も尊重しなければならず,法的な因果関係の認定についての,これ以上の権威はありません。
しかも,原因裁定の結論には異議を申し立てる手続はありません。これが最終決定です。
したがって,原因裁定で有明海異変・漁業被害の真犯人は諫干であるという結論がでると,これによって,因果関係は最終的に法的決着がつくことになります。
万一,原因裁定で法的な因果関係の認定は難しいという不当な結論がでることになったとしても,すでに専門委員の報告書が出ていますから,それは今回の高裁決定と同じく,漁業環境の悪化と諫干が無関係だからというのではなく,因果関係のハードルを高くしてのものでしかありえません。
したがって,原因裁定は,法的因果関係を認めさせることができれば,わたしたちの到達点を大きく前進させることになりますし,万一,法的因果関係を認める結論が出なくても,わたしたちの到達点をこれ以上後退させるものにはなりません。
いずれにしても,いま求められるのは,闘いのねばり強さです。
国のねらいは,漁民の結束を分断し,心理的に追いつめ,あきらめさせることにあります。
しかし,今回の不当決定によって,わたしたちの前にもたらされた「困難」は,決して乗り越えることのできないものではありません。
不当決定によっても打ち消すことができなかった到達点をわたしたちが築いてきたことに,しっかりと確信をもちましょう。
そして,これを機に,更に結束を固め,有明海再生の日まで,粘り強く戦いましょう。
弁護団も,有明海再生の最後の目標に向かって,いっそう気力を充実させて戦う決意です。
以上