公害弁連第35回総会議案書
2006.3.18  大阪
【圏央道あきる野土地収用事件関係】
2006年2月23日
高裁の不当判決に対する抗議声明

 東京高等裁判所民事24部(大喜多啓光裁判長)は、本日、行政側の控訴を全面的に容認し、あきる野市牛沼地域の圏央道(首都圏中央連絡自動車道)建設に関する国土交通大臣の事業認定(2000年1月19日)、及び東京都収用委員会の収用裁決(2002年9月30日)の取り消しを否定する判決を言い渡した。事業認定及び収用裁決を違法とし、圏央道建設事業そのものを批判し、住民無視の行政のあり方に歯止めをかけた東京地方裁判所判決(2004年4月22日)を覆すものである。
 しかも、同判決は、1970年代の成長期に計画され、いわゆるバブル期を通じて具体化されてきた圏央道の建設事業について、前提とされた各地域の開発や物流などの建設目的はすでに失われているにもかかわらず、その公共性を安易に認めたものである。しかも、一般道を走行しても5,6分しか要しない1.9キロメートルの間に巨額の費用を要するインターチェンジを二つも設置することをも容認した。
 他方では、SPMの予測を行わなかったことまで正当化するなど誤った環境アセスメントを鵜呑みにし、圏央道が建設されることによって激化する大気汚染や騒音問題など道路公害についても、これを否定し、自然環境や文化遺産が破壊され、長年住み慣れた住居を移転しなければならない住民らの犠牲も無視した。
 本日の判決は、住民らが事実をもって指摘し続けてきた圏央道建設によって生ずる深刻な問題に目をつむり、一審判決で瑕疵ある道路と批判された圏央道の建設を容認した。しかも、高裁審理では行政側がほとんど立証活動らしい立証活動をしていないにもかかわらず、その主張を鵜呑みにしたものであって、行政追随のきわめて偏頗な判決といわざるをえない。本判決は、無駄な公共事業や道路公害の激化に対する国民の批判を無視し、公害反対や環境保護を求めている全国の住民の運動にも敵対するものと言わざるを得ない。無駄で有害な20世紀型の公共事業から決別して、環境保全型への転換をはかっている国際的な流れにも逆行するものであって、断じて許し難い判決である。
 私たちは、本判決に対して断固抗議する。行政に対し、あらためて圏央道建設計画そのものを抜本的に見直すことを求めるとともに、無駄な公共事業、環境破壊と道路公害に反対して、最後までたたかうものである。

圏央道あきる野土地収用事件地権者関係人一同
圏央道あきる野土地収用事件弁護団
牛沼土地収用反対裁判を支える会