九州廃棄物問題研究会の1年の歩み
弁護士 高橋謙一
1 昨年度も、中心は市町村あるいは組合など行政施行の焼却施設との戦いであった。
当初、私たちは、かかる焼却施設もまた周辺住民の人格権を侵害するものとして、設置あるいは操業の差止を求める訴訟を提起した。ところが、住民の反対運動によるプレッシャーを受け、操業者側はおよそできる限りの細心の注意を払って操業を行ってきた。そのため、私たちが懸念したような危険な操業はなされず、周辺環境にもあまり強い悪影響は出なかった。
従って裁判で操業を差し止めることは困難となっている。ただし、かかる事態になったのは、住民が反対運動を起こし、議会・町内会など法廷の内外を問わず、ありとあらゆる場所でありとあらゆる手段を用いて、当該施設・操業の問題点を指摘したからである。まさしく運動により、環境悪化を止めてきたのである。だから私たちは現在、操業を止めることができなくても、今のままの操業を続けさせればそれでよいと考えるに至っている。その方策として、実のある協定を得ることができないか、検討に入っている。もちろんそのような協定を本当に結ぶことができるかどうかはまだ予断を許さない。しかしできない場合には、今と同じように反対運動を続けていけばよいだけである。反対運動を継続する限り、環境悪化を止められるということを住民は確信持っており、発展性のある運動が期待できる。
2 九州廃棄物問題研究会が結成されてすでに10年を超えている。この間、私たちは産廃・一廃、あるいは最終処分場・焼却施設・中間処理施設などを問わず、廃棄物処理問題に従事してきた。
そこで気付いたことは、廃掃法は、世間がいうほど穴だらけの法ではなく、ハサミ同様に使い方によっては非常に有効である。ただ「所有者」である都道府県がきちんと使っていないということである。
都道府県に、廃掃法というそれなりに有力な道具を効果的に使わせるためにはどうすればよいのか。それが現在の私たちのテーマである。
その一つの手段として、過去の処分場の後始末を題材にできないかと考えている。つまり、都道府県がきちんと廃掃法を適用しなかったために大問題となっている処分場について、その不作為を理由に都道府県に対して損害賠償や撤去を求めるのである。その過程で都道府県が本来行使すべき権限を行使しなかったことを明らかにし、翻って今後は積極的に行使せざるを得ないように追い込むという戦略である。
その発想から、昨年末、福岡県と鹿児島県で、相次いで義務付け訴訟を提訴した。
この「作戦」がうまく行くかどうかはまだわからないが、今年は、こちらを中心に更に戦いを続けて行く所存である。