【1】 基調報告
第1 公害・環境をとりまく情勢
1 平和をめぐる動き
改憲をめぐる情勢は,緊迫の度を深めつつある。2005年9月,総選挙で大幅議席増を果たした自民党は,結党50年記念大会で「新憲法草案」を発表した。「草案」は,現憲法が掲げる平和主義・国民主権・基本的人権の尊重の基本原理を根底から覆し,戦争する国・弱肉強食の競争国家に再構築することを狙ったものとなっている。9条改憲をめぐっては,財界三団体も集団的自衛権の行使を認める見解を明らかにしており,民主党も前原代表が訪米の際,「集団的自衛権を行使できるよう憲法改正を認める方向で検討すべきだ」と発言するなど,明文改憲に向けた動きがいよいよ具体化している。
一方,米軍再編=トランスフォーメーションが進められている。これは,地球的規模で,アメリカの即時対応可能な先制攻撃態勢づくりを狙ったもので,同盟国軍との共同軍事態勢づくりが重視されており,9条改憲を含む日本の軍事大国化の動きも,その一環として位置づけられている。
わが国との関係では,沖縄県名護市沿岸部での新基地建設,キャンプ座間への新戦闘司令部の移設,米軍・自衛隊による横田基地の共同使用など再編・強化が目白押しとなっている。
また,小泉首相は,侵略戦争を正当化する靖国神社公式参拝をくり返し,教育基本法「改正」を準備し,教育現場での日の丸・君が代の強要など,アジア諸国からも強い批判を受けている。
2 小泉改革をめぐる動き
この間,小泉「構造改革」のひずみが噴出した事件が相ついでいる。耐震強度偽装事件では,建築確認を民間に「丸投げ」した規制緩和路線が問題の根本として浮きぼりになっており,BSE問題でも,米国の早期再開の強い要求に従って,国民の不安を押しきって輸入再開を急いだ小泉内閣の責任が問われており,またライブドア事件でも,堀江前社長の「錬金術」を生み出した商法「改正」など利益第一の規制緩和施策が厳しく問われるところとなっている。
こうした中で,国民の所得格差が拡大しており,97年対比で生活保護世帯が60万世帯から100万世帯へ,教育扶助・就学援助が6.6%から12.8%に急増している。これは小泉改革の下で,国民負担の増大と大企業支援の強化を押し進めてきた「新自由主義」の帰結といえる。
2006年予算案でみても,定率減税廃止による大増税,高齢者への医療負担増,社会保障切捨ての一方で,法人税減税の継続に加えて,環境破壊・ムダ遣いの巨大開発は止まるところをしらず,「国際競争力強化」を名目に,京浜・名古屋・阪神の「スーパー中枢港湾」整備,関西国際空港二期工事,三大都市圏の環状道路整備などに集中的に予算を投入する構図は,いぜん変わっておらず,治水・利水上の建設根拠を失った群馬県八ッ場ダム,環境破壊の諫早湾干拓事業もいぜん継続とされている。