公害弁連第38回総会議案書
2009.3.29  東京
【3】 特別報告
道路公害に反対する運動の報告
道路全国連(道路公害反対運動全国連絡会)
事務局長 橋本良仁

1  道路特定財源の一般財源化
 2008年通常国会は、いわゆる「ガソリン国会」と化した。07年11月国交省道路局は、08年4月からの「道路の中期計画」を発表したが、計画年数を5箇年から倍の10箇年とした。当時の福田政権は「道路特定財源延長法案」と「暫定税率維持関連法案」を国会に提出したが、世論調査では「道路の中期計画」に反対が90%、特定財源の一般財源化賛成は60%に達していた。
 前年の参議院選挙で野党が多数となっていた「ねじれ国会」において、08年3月31日をもって暫定税率失効という前代未聞の出来事が生じた。その後、衆議院の2/3以上の賛成で再可決されたが、福田首相は、2009年度から道路特定財源を一般財源化するという公約を閣議決定した。この事実を見ただけで、いかに政府や国交省の考えが国民世論から乖離しているかが判る。2008年4月26日、道路全国連は、「ムダで有害な道路建設を止めるため道路中期計画を廃止し、道路特定財源の一般財源化を求める」の声明を発表した(資料1を参照)。

2  国会審議なしで個別の道路建設が進む
 1953年、田中角栄議員らは議員立法による「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」を提出し可決させた。この法律は時限立法であり、暫定5箇年計画であるため、建設大臣が策定し閣議決定さえすれば国民の代表により国権の最高機関である国会の審議なしに成立するという代物である。政・官・業の癒着による「道路建設の暴走」は、この翌年から始まり現在に至っている。
 国会の審議の必要性を認めない超法規である「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」の悪法ぶりは、最近の国会予算質疑でも明らかである。新規建設道路や、事業化から5年経過後も未着工、さらに着工後10年経過した道路事業の個別の事業評価を問題にすると、道路関連予算の大枠には答弁するが、個別道路の評価や再評価、予算などには答えないというのが政府の一貫した姿勢である。

3  裁判、各種議会への働きかけ、そして世論を広げる
 司法には、行政の暴走をチェックする機能が求められている。道路関係の住民団体や自然保護団体は、全国各地で司法の場で戦いを進めている。
 圏央道の高尾山天狗裁判は「あきる野〜八王子ジャンクション間事業認定取消請求行政訴訟」が最高裁に上告中であり、その他、東京高裁では圏央道工事差し止め請求民事訴訟、東京地裁では高尾山部分の事業認定取消請求の行政訴訟を行なっている。横浜環状南線(圏央道の一部)では住民団体である横浜連協が国交省の強引なボウリング調査を差し止めるための行政訴訟を起こしたが、昨年末敗訴した。
 そのほか、西東京3・2・6号線の建設差止め訴訟は2009年2月に東京地裁で結審し、下北沢補助54号線、国分寺3・2・8号線、二子玉川補助49号線、さらに広島国道2号線が司法の場で闘っている。

4  道路公害反対運動全国交流集会
 2008年11月、8・9日、大阪を会場に、「21世紀の道路行政と健康・環境を考える」をテーマに第34回道路公害反対運動全国交流集会を開催した。集会参加者は、国会でも議論された道路特定財源の問題点と一般財源化への道筋やPM2.5環境基準制定を求める運動を広げるための議論を深めた(資料2を参照)。

5  全国公害被害者総行動や公害弁連との共同
 ムダで有害な公共事業によって予測される公害の被害を事前に差し止める闘いは、新たな段階に入っている。受けた公害の被害を補償させ、公害を発生させない社会を構築することから、公害発生を未然に防ぎ、自然環境や住環境を守る闘いが求められている。九州の川辺川ダム、有明海の闘いは大きく前進した。
 「やま・かわ・うみ・そら」を結んで、ムダで有害な公共事業を止めさせる運動を、全国公害被害者総行動実行委員会や公害弁連と共同して進めることは言うまでもない。
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