(資料 1)
ムダで有害な道路建設を止めるため
道路中期計画を廃止し、
道路特定財源の一般財源化を求める
2008年4月26日
道路公害反対運動国連絡会
必要な高規格道路の大部分は既に整備が終わっている
1953年、道路整備を目的に揮発油税を道路特定財源とする「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」を田中角栄氏らが議員立法で制定した。1954年には第1次道路整備5ヶ年計画が策定され、それ以降、道路特定財源は年に総額5〜6兆円もの規模になり、高規格道路と呼ばれる高速道路を中心に日本の幹線道路は飛躍的に整備された。
一方、有料道路事業は道路公団を中心に1961年から始まり、これまでに整備された有料道路は計画されている高規格幹線道路14,000kmのうち、約8,200kmに達し、直轄による約1,100kmと合わせると整備済みの高規格道路は約9,300kmになる。この結果、建設費に見合う整備効果が期待でき、必要とされる高規格道路のほとんどは既に整備されている。
大規模な高規格道路整備の一方で
真に必要な生活道路の整備が切り捨てられている
しかし、このような高規格道路に対する巨額の投資にもかかわらず、国民の道路に対する不満は大きい。これは一般国道約54,000kmに対し、高規格幹線道路14,000km、準高規格道路としての地域高規格道路約7,000km、計21,000kmと一般国道の4割にも達する高速道路が計画され整備されてきた結果、生活道路が切り捨てられ放置されてきたからである。08年から始まる道路整備10ヶ年計画が現在「道路中期計画」として国会で論議されているが、総額59兆円の約4割にあたる約24兆円が高規格道路整備にあてられる一方、相変わらず真の生活道路整備への投資割合は少ない。
今後、建設が予定されている高規格道路の路線は交通量の少ない地方が中心である。公共交通の少ない地方、特に中山間地ではクルマが唯一の交通手段であり、日常生活のかなめである。こうした地域の住民要求は、国道も含めた生活道路の拡幅、ガードレールの設置など、現道の改良と安全対策の充実、そして土砂崩壊防止などの災害防止にあり、高規格道路の新設を望んではいない。都市部においても歩道の整備などが放置されており、生活道路の整備は急務である。今後予定されている高規格道路の新設を止め、その費用をこれら生活道路の改善にあてれば、その大部分は達成される。
これ以上の不必要な高規格道路建設は
負の遺産のみをもたらす
高規格道路の新設は、大気汚染、騒音など生活環境や、自然、景観、文化財などを破壊するため、新設道路予定地のほとんどで住民の反対運動が起っている。また、今後予定されている地方における高規格道路建設は完成後の交通量が少ないため、有料道路として採算が合わず、道路特定財源による直轄事業とならざるをえない。しかもこの直轄事業には地元負担が25%もあり、アクセス道路等を入れると約30%が住民負担となり、地方自治体財政を破綻させている。
厚労省の社会保障・人口問題研究所は、2050年推計で人口は現在に比べ約30%減り、65歳以上の高齢者が総人口の40.5%に達するとしている。30年後の自動車台数は3割以上減ると予想され、現在、建設している高規格道路は軒並み交通量が減少し採算割れ、不良資産となることが目に見えている。私たちの子どもや孫に高規格道路という不良資産を残してはならない。
また、地球温暖化原因物質全体の2割を排出している自動車交通を抑制しようという時代に、自動車交通のための高規格道路建設を建設し続けることは世界の流れに逆行する。
都市部の新設道路の多くにもムダで有害な道路
国会論議では取り上げられていないが、ムダで有害な道路は高規格道路だけでなく、中期計画にある「生活幹線道路(国道、都道府県道等)29兆円」の内の新設道路計画の大部分もそれに該当する。
何十年も前に都市計画決定された都市計画道路は全国規模で73,000kmにおよび、その整備率は53%である。半分近くの都市計画道路が未整備ということになるが、実際の都市部の道路ネットワークは既に大部分が整備済みで、新設予定の都市計画道路の多くは既存道路ネットと重複するなど不必要なものが多い。
現状の都市計画決定されている道路計画は過大である。そのためこうした都市計画道路を新設することは地域のまちこわし、公害をもたらすものとして建設反対や計画変更を求める住民運動の対象となっている。これら都市計画道路が真に必要であるかどうかは計画路線ごとに、関係住民の参加のもとで協議し必要性を検証の上、計画の存続、廃止、変更を改めて決定し直すべきである。実際、埼玉県や兵庫県のように検証の結果、40〜50本の都市計画道路を廃止している例もある。都市計画道路ネットワークを社会情勢の変化を踏まえ全面的に見直すことは国の行うべき施策でもあり、こうした見なおしを行うことにより、中期計画にある「生活幹線道路整備29兆円」の半分以上が不必要なものとなる可能性が高い。
ムダで有害な道路の建設を推進し支えている
特定財源制度
このような不必要な高規格道路や都市計画道路の建設を推進し保障しているのが道路特定財源である。不要な高規格道路建設は住民に過大な財政負担を強い、自然環境や生活環境を破壊し、道路が完成すれば不良資産となる。
一方、都市部における都市計画道路の新設は誘発交通を発生させるだけで、交通渋滞の解消につながらないばかりか、かえって深刻化させる例さえある。このような結果もたらす道路特定財源制度は直ちに廃止して一般財源化すべきである。道路特定財源を一般財源とし、国規格の道路建設および改良修繕などの補助制度の地方自治体押し付けを廃し、地方分権にふさわしく地方自治体にその使用裁量もまかせることが必要である。
総合交通政策の確立でクルマ依存を脱却する
福祉、医療などの課題に対応する社会のためにも
ムダな道路建設を止める
道路特定財源の一般化への動きとして05年5月、小泉首相が経済財政諮問会議で道路特定財源の一般財源化を含めた見直しを指示し、同年12月、政府・与党は一般財源化を図る基本方針を策定した。07年3月安倍内閣では1,806億円を一般財源化する07年度予算が成立した。08年3月には福田首相が09年度からの一般財源化を表明した。しかし、与党内には「必要な道路は建設する」との要求が強く、その「必要な道路」の中で高規格道路の優先が位置づけられている。
国民が真に望んでいるのは大型道路建設ではない。日々の生活に欠かせない生活道路の整備や補修である。都市部の渋滞対策はクルマのための道路の新設ではなく、公共交通機関の整備とTDM等の実施によってクルマ依存を脱却しクルマの総交通量の削減を目指す総合交通政策にこそ求められるべきである。道路特定財源の一般財源化にあわせ、そうした政策こそ確立する必要がある。
少子高齢化社会を迎え、福祉、医療、年金、教育など課題は山積している。こうした課題に対応するためにも道路中期計画の廃止と道路特定財源の一般財源化を強く求めるものである。国民生活向上のためにも、我々の力を結集してムダで有害な道路建設を止めよう。