【2】 各地裁判のたたかいの報告(大気汚染)
〔2〕 西淀川大気汚染公害訴訟
西淀川公害訴訟弁護団
弁護士 村松昭夫
1 公害根絶に向けて
2008年は、西淀川公害訴訟の裁判闘争終結の10年目であったが、現在も、公害根絶に向けて「道路連絡会」の活動とともに財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)を設立して継続的な取り組みを行っている。
大阪の大気汚染は、ここ数年はNO2もSPMも改善傾向を示し、西淀川区においても同様であるが、決して安心して生活できるレベルまで改善されたわけでない。PM2.5に関しては、和解条項の履行として区内2カ所で国交省による常時測定が行われているが、その測定値はアメリカやWHOの環境基準値等を大幅に上回っており、引き続き、公害根絶に向けた闘いが求められている現状である。
2 第13回道路連絡会について
第13回道路連絡会は、2008年6月24日午後1時30分〜午後3時30分の日程で公開で行われた。
「道路連絡会」では、はじめに公害被害者2名が公害被害の苦しみとともに道路公害の現状についての訴えを行い、その後協議を行った。
まず、原告側は、連絡会開催にあたり、①国道43号線を中心に大型車等の交通量削減を行うこと、②国道2号線歌島橋交差点の整備に関連して、横断歩道の撤去の撤回や防犯対策、交差点周辺の緑を増やすこと、③国道43号線などの沿道対策の強化、④国道43号線のバリアフリー化を進めること等を要望した。これに対して、国側は、国道43号線の緑地の拡大や、新技術の実験などに関してはできるところから取り組むという姿勢は示したが、肝心の大型車対策については、必ずしも積極的な姿勢を見せなかった。また、国道43号線によって中島地区が陸の孤島になっている状況の解消やバリヤフリー化に関しては、バリアフリー法との連携、検討を約束したに止まった。歌島橋交差点の横断歩道の撤去問題に関しては、これに応じる姿勢を見せず、交差点周辺の緑の確保に関しては住民意見を聞いて対応する旨を回答した。
3 今後の課題
道路連絡会は、13回目を迎えたが、引き続き国側は交通量とりわけ大型車の交通量を削減するには消極的であり、そのことが区内の大気環境を大きく改善する上で最大のネックとなっている点は従来と同様である。まさに、国の国民の命や健康を守る基本姿勢が問われていると言わねばならない。
大阪でも、東京や川崎の経験に学んで、未認定の公害被害者の救済に向けて、公害患者会、民医連、労働組合等による「あおぞらプロジェクト IN 大阪」が動き出している。現在、国道43号線などを中心に健康アンケートがが取り組まれており、未認定患者らの日常生活上の被害の訴えが寄せられてきている。今後は、より詳細な聞き取りなどによって被害実態を明らかにして、その救済に向けた制度要求を行っていくことになっている。