昨年6月27日、佐賀地方裁判所は、有明海漁民らの訴えを受け入れ、国に対して諫早湾干拓潮受堤防排水門の開放を命じる判決を下した。この判決は、有明海漁民だけでなく国内外の多くの市民、NGOらから支持された。また、同判決を勝ち得た「よみがえれ!有明訴訟弁護団」に対して、韓国環境府はその功績を表彰し第1回水環境賞特別部門賞(ガイア賞)を与えた。
国は同判決を不服として控訴したが、当時の法務大臣と農水大臣は協議の上、控訴に際し「開門する腹を決め」開門を前提としたアセスを実施することを決断した。
それにもかかわらず、国は、いまだに開門できないとの主張を繰り返しており、開門に向けた漁業者らとの協議に応じようとしない。
有明海を再生するためには、調整池に海水を導入し水質を改善するとともに、有明海の潮流を回復させること、干潟を再生させることなどが必要であるが、そのための第一歩として、潮受堤防排水門を開放することが不可欠である。
そして、農水省が予定している開門調査のための環境アセスメント(以下「開門アセス」という。)を前提としなくても、開門を実施することは可能である。現に、農水省が実施した短期開門調査では、特段の工事等なしに開門を実施しており、しかも、それによって農水省が懸念するような被害は生じてはいない。現時点で問題となるのは調整池に代わる農業用水の水源確保の問題だけであるが、この点については、すでに漁民らから提案されている代替水源案を実施することですぐにでも調整池に代わる農業用水を確保することが可能であり開門を先送りにする理由にはならない。
国が開門の実施を先送りにしている間にも有明海の環境は悪化の一途をたどっている。今年、佐賀県沖の海苔養殖業を中心に有明海沿岸では未曽有の凶作に見舞われ、多くの漁民たちの生活そして命が奪われ、地域が破壊されていっている。
開門アセスの実施を口実に開門の実施を先送りにすることは許されるものではない。
全国公害弁護団連絡会議(公害弁連)は、一貫して諫早湾干拓の見直しを求め、昨年の総会では諫早湾干拓潮受堤防排水門の開門を求める決議を採択した。有明海の再生、そのための潮受堤防の開門は公害問題を戦っている全国の弁護士達の強い願いである。
そこで、公害弁連は、国に対し、開門アセスの結果を待たずに直ちに諫早湾干拓潮受堤防排水門を開門することを求めるとともに、その実現のために、有明海の漁業者らと開門に向けた協議を行うことを求め、決議する。
第38回全国公害弁護団連絡会議総会