(第37回総会・諫早)

 わが国では,これまで,全国各地で大気汚染公害裁判が闘われ,被害者・住民は画期的な勝利和解をかちとって,その後も公害のないまちづくりのため広範な活動を展開してきた。
 しかしながら大気汚染による被害は,今なお継続しており,たとえば,気管支ぜん息罹患率は,この10年間でも2倍以上に増加しており,都市部の罹患率は全国平均の2~3倍で推移している。
 一方で,ディーゼル排出微粒子(DEP)をはじめとした微小粒子の健康影響は,世界的にみていよいよ明白となっており,わが国のPM2.5濃度は,米国と比べても,これをはるかに上回る深刻な汚染実態となっていることが明らかになっている。
 こうした中で.米国では,1997年に設定された大気質基準が2006年に強化され,一方WHOも2006年,新たにPM2.5ガイドラインを設定するに至っている。
 これに対し,環境省は,微小粒子状物質(PM2.5)の健康影響について,2007年5月に設置された微小粒子状物質健康影響評価検討会において専門的検討を進め,2007年度中の取りまとめを目指しており,一方,先般和解が成立した東京大気汚染公害裁判では,和解条項中で,「(上記検討会の)検討結果を踏まえ,環境基準の設定も含めて対応について検討する」と,対応に変化が見えつつあるが,今や早急にPM2.5基準を設定し,この達成のために大気汚染対策を抜本的に強化することが緊急の課題となっている。
 以上をふまえて,政府が,一刻も早く全米大気質基準ないしWHOガイドラインと同等のレベルでの環境基準を設定することを求め,決議する。

2008年3月23日
第37回全国公害弁護団連絡会議総会