2001年12月18日、東京大気汚染公害裁判が提訴から5年7ヶ月で結審し、この夏には第1次の判決の言い渡しがなされようとしている。
東京大気裁判は、初めてディーゼル車メーカー7杜を被告として、公害発生責任を追及していること、広大な東京都内の面的汚染の責任を問うていること、そして初めて未認定患者の被害救済を求めるものであることなど、大きな特徴を持つものである。
この裁判に勝利することは、第1にいま小泉「改革」として押し進められようとしている「都市再生」事業への大幅な財源投入、首都圏などの新たな高規格幹線道路の建設強行といった政策の転換を求め、地域環境を守り、人間中心の都市への再生を目指す住民、被害者の運動を大きく発展させるものである。
第2に膨大な未認定患者の救済が緊急の課題であること、そして自動車メーカーがそれら公害被害者の救済の責任を負うことを明碓にし、自動車メーカーが主要な財源を負担して公害被害者救済の制度を確立させていくたたかいの展望を大きく切り開くものである。
この点に関し、東京都は2001年3月の都議会において公害医療費助成条例に関して「大気汚染の原因者の責任を明確にした上で、原因者責任と適正な負担のあり方や救済すべき対象の範囲と認定の方法など制度全般にわたる総合的な見直しを検討してまいります」と答弁し、同趣旨の付帯決議がなされた。その「原因者」としては自動車メーカーが主要なものとして考えられている。
また国も西淀川判決以降4連敗、なおかつ東京訴訟でも敗訴が不可避という状況をふまえて、被害者救済制度のありかたに関し再検討を始めざるを得ない状況になっている。
また昨年12月、東京都税制調査会は「国内自動車メーカーには、より規制の厳しい海外向け仕様と国内向け仕様とを分けて生産、出荷している実態があるなど、技術力があるにもかかわらず、環境負荷の小さい低公害の自動車の生産のためにぎりぎりの努力をしているとは言い難い」と指摘して、自動車メーカー税の導入を答申している。このように自動車メーカーが公害防止の義務を怠ってきたことは広く認識されるようになっており、公害発生責任を負うべきことを求める世論は高まりつつある。
われわれは、裁判所が深刻な大気汚染被害の実情を直視して、公害根絶と被害者の完全救済を求める国民の期待に応える判決をなすこと、そして国・束京都は早急に新たな公害被害者救済制度を確立することを強く求めるとともに、その実現まで全国の被害者、国民と連帯してたたかう決意を明らかにするものである。
全国公害弁護団連絡会議第31回総会