(第34回総会・東京)

 圏央道は東京都の都心から50キロ圏を環状に計画された1都4県にまたがる総延長約300km・総工事費約6兆円の自動車専用道路である。圏央道の計画地には高尾山を中心とする明治の森高尾国定公園をはじめ貴重な自然環境が多く、これらの自然環境や豊かな自然景観を破壊することや、騒音・大気汚染の健康被害の危険性があることから多くの住民が反対しており、2005年現在でも開通区間は関越道鶴ヶ島ジャンクションから日の出インターまでの約28キロに過ぎずいつ全面開通できるのか全く目途が立たない状況である。
 このような中、国土交通省は、日の出インターからあきる野インターまでの工事を強行に進めると共に、圏央道計画に反対している土地所有者らに対する土地収用手続きを進め2000年1月19日に事業認定を行った。さらに八王子市では1999年には八王子城跡トンネル工事に着手すると共に、2002年4月19日中央自動車道から北側の区間の事業認定を行った。
 このような工事の進行や土地の強制取得のための事業認定に対し、圏央道に反対する住民は、八王子地域では圏央道工事の差止を求める訴訟を東京地裁八王子支部に提訴し、事業認定取消訴訟も東京地裁に提訴した。一方あきる野地或でも事業認定取消訴訟を提起し、その後東京都収用委員会の収用裁決取消訴訟も追加提訴した。
 訴訟において、圏央道が都心の渋滞解消効果に果たす役割は小さく、多摩地域の経済発展に果たす役割も科学的根拠が無く、無駄な工事に巨額な税金が使われることが明らかになった。そればかりか、騒音被害や大気汚染被害も重大であることが明らかになった。その結果、あきる野の事業認定取消訴訟において東京地裁民事3部は2003年10月東京都の土地収用明渡代執行を停止する画期的な決定を出した(ただ残念なことに抗告審の東京高裁はこの決定を取消し、最高裁も高裁決定を支持して確定した)。そして2004年4月22日には事業認定及び収用明渡裁決を取消す判決を下した。東京地裁の事業認定及び収用明渡裁決を取消す判決は、その理由として、圏央道は受忍限度を超える騒音被害が発生することが予測される瑕疵ある道路で、そのような瑕疵のある道路の建設を認める事業認定をすることは前提要件を欠き違法であるとした。しかも大気汚染の調査も杜撰で被害の危険性があること、圏央道の公共性も弱いこと、2キロ弱に2つのインターチェンジを作る必要性がないこと、代替案の検討もしていないなどを認定して事業認定は違法であると指摘した画期的なものであった。現在国土交通大臣が控訴しているが控訴審においても引き続き一審判決が維持されることを強く求めるものである。
 八王子地域の事業認定及び収用裁決取消裁判に関しては本年5月31日に判決が予想されている。
 また工事差止め訴訟も今年中には結審し来年春判決が予想される。
 圏央道は公共性も無く巨額な無駄な公共事業である一方深刻な騒音被害や大気汚染被害も明らかになった。東京地裁が本年5月31日に予定されている判決で、あきる野地域の事業認定取消訴訟に引き続き、八王子地域においても事業認定及び収用裁決を取消す判決を出すように強く求めるものである。
 しかし、事業認定が取消されても国土交通大臣は控訴して工事を強行している。あきる野地域では1審判決で事業認定及び収用裁決が取消されたにもかかわらず、立ち退きが強行され既に工事が 完成寸前まで進んでいる。一方八王子地域でも八王子城跡トンネルが半分以上掘られ、中央自動車道とのジャンクションも工事が強行されている。
 無駄な道路であることが司法の場で指摘されても判決確定を引き延ばし工事を強行している国土交通省及び日本道路公団の態度は許せないものである。
 このような国土交通省らの対応を許さず、裁判所が速やかに工事差止の判決を下すことを求める。
 また国土交通省及び日本道路公団は圏央道の工事を即刻中止すべきである。
 以上決議する。

2005年3月21日
第34回全国公害弁護団連絡会議総会