東京大気汚染公害裁判2次~5次訴訟は,東京地裁での総論立証をまもなく終了し,年内にも結審,来年の秋には判決言い渡しが見込まれる状況となっている。
法廷では,とりわけトヨタをはじめとする被告メーカーらの公害発生責任の重大さが余すところなく明らかにされている。
被告メーカーらはオイルショック後の深刻な不況による商用車の需要低迷,買い控えによる経営危機を乗り越えるため,従来技術的には難しいとされていたディーゼルエンジンを小型化するための開発に取り組み,それまでほとんどがガソリン車であった中小型トラック分野のディーゼル化を推し進めた。そしてディーゼルトラックが燃料の経済性に優れていることを大宣伝して,1970年代後半以降これを大量に売り続けた。そのため我が国では,ライトバンなど一部の小型トラックを除いて,中小型トラックは,ほとんどがディーゼル車となっている。
また法廷では車両総重量8トン(4トン積み)以下のディーゼルトラック・バス・乗用車が排出する粒子状物質は,東京都内の全排出量のうち,75%(1999年)を占めていることも明らかにされた。被告メーカーらによる中小型トラックなどのディーゼル化がなければ,汚染は現在の4分の1に改善されていたのである。
被告メーカーらは,遅くとも1973年までにはディーゼル排ガスが深刻な大気汚染を引き起こすことを認識していたことは第1次判決でも明らかにされており,それを承知でディーゼル化を推し進めたのである。まさしく都市住民の健康と安全よりも企業利益を優先した経営戦略の結果が,今日の深刻な大気汚染公害被害をもたらしたのである。
ところが被告メーカーらは,こうして深刻な被害をもたらしてきた事実を全く反省することなく,ディーゼル規制による買い換え需要の創出によって,軒並み「史上空前」の利益をあげる一方,公害被害救済制度の創設に足を踏み出せとの被害者の要求には,相変わらず背を向けており,原告らとの交渉においても不誠実な態度をとり続けている。
裁判所は,今こそディーゼル排ガス公害をもたらした自動車メーカーらの責任を明確に裁き,すべての被害者を救済する判決をなす事が求められている。
私たちは,全面勝利判決を勝ち取り,被害救済制度の一刻も早い創設、実効性あるディーゼル排ガス対策の推進、そして東京大気汚染公害裁判の全面勝利、全面解決をめざして、広範な人々と連帯して闘い抜くことを表明して、決議とする。
第34回全国公害弁護団連絡会議総会