(第38回総会・東京)

 国は、圏央道・高尾山トンネル工事を遮二無二進めている。昨年11月には、工事に反対する運動の象徴となっていた「和居和居デッキ」を道路法を理由とした行政代執行によって強制的に撤去した。デッキは、住民らによるトラスト地内に設置されたものである。道路法は、このように土地境界の争いがある場合の強制措置を予定したものではなく、国の行為は脱法的であり、トンネル工事の道理のなさを改めて示すものとなった。
 高尾山は1300種を越える植物や80本のブナ林、800本のイヌブナがあり、豊かな植相から昆虫や動物も多く、世界遺産に相当する貴重な自然である。再度、ミシュランの三つ星を獲得し、その価値が改めて注目されている。
 すでにトンネル工事が進行している国史跡八王子城跡では、御主殿の滝が涸れるなどのトンネル工事を原因とした被害が発生している。そして、高尾山と八王子城跡とは地層が似通っていることから、八王子城跡で起こる地下水脈枯渇は高尾山でも繰り返される可能性が高いことは、国土交通省自身が認めていることである。
 高尾山トンネル工事が強行されれば、水脈が破壊され、歴史的な修験道の道場であり、今日では市民にも開かれた水行の場である琵琶滝、蛇滝が涸れ、1300種を超える豊かな植相と生態系を支える水環境が破壊される危険性が高い。
 こうしたもとで、裏高尾地域での事業認定取消を求めた行政訴訟について、昨年6月、東京高等裁判所が住民らの控訴を棄却する判決を言い渡したことから、住民らが上告・上告受理申立をし、現在、最高裁判所に係属している。
 圏央道が、世界遺産に匹敵する高尾山や八王子城跡の貴重な自然環境を破壊し、オオタカの営巣放棄や地下水脈を破壊するばかりか、裏高尾地域での騒音被害や大気汚染の被害を発生させることは科学的に明らかである。また、圏央道は、都心の渋滞解消や多摩地域の交通渋滞の解消と経済の発展に必要であるとの国土交通省の主張が虚偽であり、公共性が認められないことも明らかとなっている。
 また、昨年4月のいわゆる「ガソリン国会」を契機として、これまで道路建設を合理化するために利用されてきた交通需要予測の誤りや「費用便益分析マニュアル」の欠陥が指摘されるなど、国民不在の道路行政は、いま国民的批判にさらされている。
 我々は、最高裁判所が公正な判決を言い渡すことを強く希望する。
 我々は、国土交通大臣・国土交通省、中日本高速道路㈱に対し以下の通り要求する。

  無駄で公害を発生し豊かな自然環境を破壊する高尾山トンネル工事を直ちに中止すること。

 以上、決議する。

2009(平成21)年3月29日
第38回全国公害弁護団連絡会議総会