(第33回総会・熊本)

 諌早湾干拓事業のもらたした有明海異変とこれによる漁業被害は,いよいよ深刻な事態となっている。
 1989年に着工された諌早湾干拓事業は,工事が進むにつれ,諌早湾内の漁業に壊滅的な打撃を与え,さらに1997年4月のギロチンと称された潮受堤防締切から,その被害を一気に有明海全域へと広げた。
 有明海異変と呼ばれる深刻な環境破壊のなかで,2000年以来,ノリ養殖業は歴史的な不作に陥っている。
 このなかで漁民は,借金と生活苦にあえぎ,廃業する者も後をたたない。その結果.漁業によってなりたっていた地域経済もまた深刻な状況にある。
 それにもかかわらず,事業者の農水省は,自らが設置したノリ第3者委員会の提言を無視し,中・長期開門調査をサボタージュしている。
 有明海というわが国の特輩すべき重要な自然環境を破壊し,沿岸4県に広がる広域で深刻な漁業被害をもたらした諌早湾干拓事業は,歴史上,かつてない重大な自然破壊であり,その解決は,無駄な公共事業による自然破壊に苦しむ全国の人々にかぎりない展望を与えるものである。
 日本の無駄な公共事業,自然破壊の象徴ともいうべき諌早湾干拓事業を直ちに中止し,有明海をもとの豊饒の海に再生させる取り組みは,漁民の窮状にかんがみるとき,もはや一刻の猶予もならない。
 そのための当面の焦点は,中・長期開門調査である。
 われわれは,改めて,諌早湾干拓事業の中止と,中・長期開門調査のすみやなか実施を強く求めるものである。

2004年3月21日
第33回全国公害弁護団連絡会議総会