弁護士 堀 雅博

1  平成20年11月19日午前11時、那覇地方裁判所にて、画期的な判決が出ました。
 内容は、沖縄県と沖縄市に対して、泡瀬干潟埋立事業について、公金支出の差止を命じるものです。
 本記事は、判決に至る経緯、判決内容及び今後の展望について、記載するものです。

2  本件についての訴訟の経過は、以下の流れで進みました。
① 平成17年3月23日  住民監査請求
② 平成17年5月20日  提訴
③ 平成19年7月6日  進行協議(現地調査)
④ 平成19年10~12月  証人尋問
⑤ 平成19年12月5日  東門市長の声明 
⑥ 平成20年4月23日  結審
⑦ 平成20年11月19日  判決
(1)  環境面では、弁護団は、6人の学者に依頼して、意見書を作成していただき、証人尋問を行いました。
 6人の学者と連携を取るのは、大変でしたが、学者の協力を得て、最低限の主張・立証はできたのではないかと思います。
 残念ながら、判決では、環境影響評価書及び埋立免許・承認の違法性については認められませんでした。
 しかし、アセスメントの問題点(本件埋立事業の前例ともいうべきFTZでの失敗例を参考にしていない点など)についての言及がありました。
 この点は、控訴審においても検討することになると思います。

(2)  経済面についても、3人の学者の協力を得て、主張・立証をしました。
 経済面については、効果的な主張・立証ができたかどうかという点については疑問が残ります。
 平成12年当時の埋立事業計画の問題点として問題点として、①需要予測、②土地利用計画の具体性の欠如③沖縄市の財政への危険性の3点を指摘しつつも、結局、経済的不合理とまではいえないという内容で、平成12年の埋立免許・承認についての違法性は認められませんでした。
 しかし、判決は、平成19年12月5日の東門市長の声明文を用いて、現時点での土地利用計画は、経済的合理性を欠くため、支出は違法であるという内容でした。
 判決は、東門市長の声明文をⅡ区域について経済的合理性がないことの自白ととらえ、また、Ⅰ区域についても、声明文の内容と平成12年当時の計画の問題点からも、経済的合理性がないと判断しているようです。
 控訴審においては、弁護団も市長声明を用いた主張を検討していくことになると思います。

(3)  勝因は、東門市長の声明文にあると思います。
 しかし、東門市長の声明文及び東門市長の当選を引き出したのは、ひとえに、「泡瀬干潟を守る連絡会」をはじめとする原告団の熱意ある運動の結果であることは間違いありません。
 また、平成19年7月6日に実施された現場検証(進行協議期日)において、原告団の熱意及び泡瀬干潟の自然の重要性が裁判所にも伝わったことも大きかったのではないかと思っています。
 今後、弁護団も、原告団の熱意に負けないような訴訟活動等を展開し、一審の勝訴判決を維持したいと考えております。

3  沖縄県及び沖縄市が控訴したため、福岡高等裁判所那覇支部において、控訴審がはじまります。
 現在、沖縄市は、急遽、埋立後の土地利用計画を作成しているようです。
 そのため、弁護団としては、そのような後付ともいうべき土地利用計画には合理性がないことを主張するとともに、埋立事業を一刻も早く中止させるための早期結審を検討しているところです。
 また、あわせて、貴重な自然だからこそ、高度の経済的合理性が必要であると主張していきたいと考えております。
 なお、判決を受けてもなお、事業者・沖縄県・沖縄市は、埋立を進める姿勢を改めないばかりか、どんどん浚渫作業を進めています。
 そのため、運動面において、このような浚渫作業は不当であることを強く訴えていかなければならないと考えております。