~1年目の報告
弁護士 関守麻紀子
1 訴訟の概要
第4次厚木基地爆音訴訟は、2007年(平成19年)12月に提訴しました。その後の2008年(平成20年)4月の追加提訴と合わせ、実に7,054名もの原告が、自衛隊機及び米軍機の飛行の差止めと損害賠償の支払いを求め、民事訴訟及び行政訴訟を継続しています。
民事訴訟では、自衛隊及び米国軍隊の①午後8時から翌朝午前8時までの離着陸及びエンジン作動、及び②70ホン(A)を超える騒音、の差止め、並びに差止めが実現するまでの損害賠償の支払い、を求めています。
行政訴訟では、自衛隊機について、①午後8時から翌朝午前8時までの運航、②訓練のための運航、③WECPNL75を超えることになる運航の差止めを、米軍機について、日米地位協定2条4項(b)の規定の適用のある施設・区域の①米軍専用施設・区域への出入りのため以外の使用、②午後8時から翌朝午前8時までの使用、③WECPNL75を超えることになる使用、の差止めを求めています。
2 訴訟の状況
(1) 訴訟のペース
2008年(平成20年)5月に第1回口頭弁論期日が開かれ、各基地訴訟弁護団から力強い意見陳述をしていただきました。
その後は7月、10月、12月に口頭弁論期日が開かれ、並行して、口頭弁論期日間の5月、6月、7月、9月、11月、2009(平成21年)1月に、進行協議期日が持たれました。
迅速な審理を実現するため、2か月に1回程度のペースで口頭弁論期日を開くことを要請するとともに、いたずらに期日が空転すること避けるため、期日間に進行協議期日を持つよう要請したことによります。従って、今のところ、ほぼ1か月に1度のペースで3者が顔を合わせることになっています。
また、期日調整を円滑にするため、年度内については、予め、弁論期日、進行協議期日を指定してもらいました。
(2) 原告意見陳述
口頭弁論期日では、毎回、原告1人が意見陳述をしています。7,000名もの原告のうちの1人ではありますが、期日毎に意見を述べることにより、被害の実態、7,000名もの原告の怒り、不安、思いを少しでも裁判所に伝えたい、と考えています。
第3次訴訟の原告でもあった1人の原告は、第3次訴訟で勝訴して喜んだが、判決確定後も爆音は一向に改善しない、やむなく第4次訴訟にも加わったが、生きている間にいったい何度裁判をしなければならないのか、と訴えました。
(3) 検証申請
9月25日、横須賀基地に新空母(原子力空母)が入港しました。空母入港前は、艦載機が飛来し、爆音が発生することが確実です。しかも今回は、初めての原子力空母配備とあって、反対運動が激しく繰り広げられるとともに、空母入港の日時が、早い時期からかなり明確に報じられていたので、日時を定めて検証を実施するには、好都合でした。
この好機を逃してはならないと、原告らは、裁判所に対し、現地における検証を求めましたが、裁判所は「時期が早い」との理由で採用していません。
(4) 差止請求について
被告国は、民事訴訟での飛行差止請求については、第1次厚木基地訴訟最高裁判所平成5年2月25日判決を引用して不適法であると主張し、行政訴訟では、①自衛隊機の運航に処分性が認められるかはさておいても、原告らの騒音被害は、行訴法37条の4第1項の「重大な損害」に該当しない、②米軍機の差止請求については、被告は米軍機の運航そのものを制約する権限を有していない、として、いずれも不適法であると主張しています。
原告らは、被告国の主張に関連して、騒音コンターの作成方法、被告国の日米地位協定の解釈について、被告国に対し、釈明を求めているのですが、被告国はなかなか回答しません。
(5) 原告らの損害は「究極的には本件飛行場周辺からの転居によって避けることができる性質の損害である」との暴論!
被告国は、原告の求釈明に対してなかなか答えないばかりか、原告らに生じている損害について、「究極的には本件飛行場周辺からの転居によって避けることができる性質の損害である」から「重大な損害」ではない、と主張しました。
公害を発生させている国が、周辺住民が出ていけば損害はなくなる、と言うのです。このような暴論を放置しておくことはできません。
3 訴訟は2年目に入りましたが、引き続き主張を展開するとともに、立証も進めていく予定です。
これからも各基地訴訟弁護団のお知恵をお借りしたく、ご支援をお願い申し上げます。