薬害肝炎全国弁護団
代表 鈴木利廣

 2002年に始まった薬害肝炎訴訟は、被害救済と薬害防止を掲げて、06年6月から07年9月の間に大阪、福岡、東京、名古屋、仙台の各地裁判決が言渡されました(第1幕)。
 これら判決を武器として、社会問題化、政治問題化の運動につなげ、08年1月11日救済法制定、1月15日国との基本合意締結に至りました(第2幕)。
 国との基本合意では、①救済法による個別救済の促進②恒久対策③検証・再発防止が約束されました。 ここから先が第3幕です。すなわち基本合意に基づく約束の実行を求めて08年3月24日、8月1日、9月9日と厚生労働大臣との協議を行い、その前進を図ってきました。
その到達点として、国は以下のことを原告団に約束し、その実行に着手しました。

① 被害者への告知を徹底するために、医療機関への職員派遣による指導等を行う(すでに実施が始まり、原告数は約1,400名に増加)。
② 肝炎患者支援法(肝炎基本立法)の制定、医療費助成(インターフェロン72週投与も含めて)、肝硬変・肝癌患者への身体障害者認定について、それぞれ努力する(4月1日から医療費助成が始まり、その余の問題についても検討が開始)。
③ 検証再発防止委員会を08年5月から09年3月までの予定で実施する(すでに開始)。
 第3幕で最も重要な課題の1つ目は、肝炎患者支援法の制定です。衆参与野党ねじれ国会において、国会に上程された与党法案が継続審議とされ、民主党法案が廃案とされました。国の責任を踏まえ、350万人に及ぶすべてのウィルス性肝炎患者が安心して治療に専念できる支援を実現するための施策の土台たる基本法を勝ち取らなければなりません。
 原告団は肝炎患者会や予防接種B型肝炎訴訟原告団とも協同しながら、国民的運動を展開中です。昨秋から今年の通常国会会期中を通して、「肝炎患者支援法の制定を!」と呼びかけた街頭キャンペーン、各地集会づくり、請願署名等を展開中です。
 課題の2つ目は、薬害防止政策の実現です。
 原告2名も委員として参加する「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」最終報告(2009年3月予定)を踏まえて、今度こそ薬害根絶政策を実現しなければなりません。
 課題の3つ目は、個別救済の拡大です。約1,400名の提訴原告の半分が、被告らの因果関係論等の抵抗もあって、未和解の状況です(2009年1月末現在)。特定血液製剤に指定されていない製剤を原因とする感染例もあり、救済法改正の必要もあります。
 なお、被告企業との基本合意については、昨年9月28日に田辺三菱製薬及びベネシスとの間で、また12月14日には日本製薬との間で締結されました。企業に対する新たな交渉の始まりです。