弁護士 松本篤周
1 はじめに
01年8月全面解決和解が成立し、7年あまりが経過した。和解を契機として設置された道路沿道環境改善に関する連絡会(略称連絡会)の取り組みの到達点について、報告する。23号の交通量を減らして、道路からの大気汚染物質を減らして、大気汚染をなくすことが課題である。そのための車線削減であり、交通量調査であり、大気汚染の測定である。これがどうなってきたか、という観点から報告する。なお、例年7月に実施されている道路交通量調査は、昨年は11月に実施され、現時点では集計がなされていないため、現時点では報告できない。
2 名古屋南部道路環境連絡会
① 「国道23号の交通量低減に関する意向調査」について
原告側の要求の柱の一つであった懸案の「①大型車の交通量削減のための総合的な調査の実施」が07年10月24日に実施された。対象は、事業所及びドライバーで、回収数は、事業所票が2,552通(回収率56%、有効回収率47.2%)ドライバー票が21,893通(回収率33.6%、有効回収率25.3%)。
今年度は、クロス集計が一定程度進んでいる。詳細は正式公表を待って報告することとするが、概要は、調査当日国道23号を利用したドライバー約5,000名のうち国道23号を車線削減した場合、約4割が他の道路に転換すると回答した。また伊勢湾岸道路の料金を5割引にした場合大型車の3割程度が湾岸道路に転換すると回答した。さらに車線削減されたとしても転換しないと答えていた大型車のドライバーのうち、車線削減に加えて湾岸道路の料金を5割引した場合には、約1割が湾岸道路へ転換すると回答しており、結局車線削減と料金割引の組み合わせで、大型車の約半分が湾岸に転換するという結果となっている。
中部整備局は、今後アンケート結果を踏まえて、交通管理者である愛知県警、道路管理者である愛知県県・名古屋市・NEXPO中日本・名古屋都市高速などと検討会を発足させ、23号の交通負荷削減の方策について検討を開始するとしている。
アンケート結果の評価を踏まえ、23号の車線削減及びロードプライシングによる湾岸線への交通量の誘導を組み合わせた政策を早急に具体化させ、抜本的な交通負荷の軽減と大気環境の改善を実現すべく、上記検討会に原告・患者会の意見を反映させるべく頑張りたい。
② 環境施設帯整備について
和解のもう一つの柱である沿道整備は、和解後6年が経過したが、進捗状況ははかばかしくない。住民への周知がさらに工夫されるべきである。
中部整備局としては、住民アンケートにより過半数以上の賛成の得られた8地区を優先整備地区として整備を進める方針を立てるとともに、08年9月から11月にかけて、未着手19地区について、6つの学区のブロックに分けて、環境施設帯予定地内の地権者、居住者及び隣接地権者を対象に、地権者等の意向を確認するためのアンケート調査と用地測量・立ち会いへの協力を依頼するための説明会を開くなど、メリハリをつけた計画進捗をはかろうとしているものの、まだ相当の日時を要する見通しであり、抜本的に取り組みのテンポを引き上げる必要がある。
3 まとめ
07年は伊勢湾岸への迂回のためのアンケート調査の実現するとともに、08年はアンケート集計が進展し、08年度中には集計を完了させ、さらに23号の車線削減の検討や伊勢湾岸への誘導策の具体化を迫るなど具体的な進展が見られつつある。沿道整備も、優先地区を決めた取り組みが本格化しつつあるが、大気汚染の現状は相変わらず横ばいないしやや悪化の傾向であり、「命あるうちに青空を」という被害者の切実な願いにはほど遠いというのが現状である。弁護団としては引き続き努力を重ねる所存です。