(1) リサイクル制度の拡充
残飯や売れ残り弁当など食品廃棄物について減量、再資源化を強化する改正食品リサイクル法が、07(平成19)年12月に施行された。この改正により、業種別にリサイクル削減率が85%~40%と定められ、年間100t以上の食品廃棄物を排出する事業者は、毎年国への報告が義務づけられた。改正を契機に、食品廃棄物を堆肥にしたり、食品廃棄物で豚を飼育したりする取り組みも行われ、農業と連携したリサイクル網が形成されつつある。
経済産業・環境両省は、07(平成19)年度の家電リサイクル実績を発表した。家電リサイクル法が指定する家電4品目の引き取り件数は、ブラウン管式テレビ461万台、洗濯機288万台、冷蔵庫・冷凍庫272万台、エアコン189万台となり4.3%増の合計1,210万台に拡大した。再商品化率も、ブラウン管式テレビ86%、洗濯機73%、冷蔵庫・冷凍庫82%、エアコン87%となり前年に比べ1~9%上昇した。両省は、家電リサイクル法施行令を改正し、家電4品目に液晶式テレビ・プラズマテレビ、衣類乾燥機を追加し、09(平成21)年4月から施行する予定である。
リサイクル団体8団体で構成する3R(リユース、リデュース、リサイクル)推進団体連絡会は、自主行動計画の07(平成19)年度実績を公表した。リユースについては、ガラス瓶で大手量販店と連携したリターナブル瓶の販売促進実験が行われている。環境省が着手しているペットボトルのリユースについては、回収したペットボトルの安全性確保が問題となっている。リデュースについては、ペットボトルサイズの軽量化が進められているが、容器機能の維持のため軽量化は限界に近い状態である。リサイクルについては、10(平成22)年の回収率の目標値ガラス瓶70%、スチール缶85%、アルミ缶90%、段ボール90%については、いずれも目標を達成している。
環境省は、06(18)年度のゴミ排出、処理状況の調査結果を公表した。ゴミ総排出量は、前年度1.3%減の5,202万トンとなり3年連続減少した。東京ドームの容量に換算すると、約142杯分から約140杯分に減った。処理状況については、リサイクル意識の高まりを反映して、再利用率が1.8%増の1,021万トンに拡大し、最終処分量は7.2%減の680万トンに縮小した。
環境省は、08(平成20)年度から12(平成24)年度までの5年間に、ゴミ焼却による発電(ゴミ発電)量を5割増やし、焼却をしない直接埋め立て処分を原則廃止する方針を決定した。ゴミ発電は、焼却処分する廃棄物を燃料とするため発電に伴う新たな二酸化炭素が発生せず、地球温暖化対策に寄与するとされている。
(2) 市民のリサイクル意識の向上と問題点
日本生活協同組合連合会は、07(平成19)年度にレジ袋3億8,800枚を削減したと発表した。日本では年間300億枚が使用されているといわれ、1.3%削減したことになる。削減方法としては、(1)レジで袋を購入する、(2)レジ袋を断るとポイントがたまる、(3)代金箱にお金を入れるが採用されたが、(1)の方法では90%の削減効果があった。最も効果が低かったのは(2)の方法で削減率は34%に止まった。市民の間では、マイバック持参運動が広がり、様々なデザインのマイバックが販売されるようになった。
また、PTA、子ども会などの市民団体や障害者授産施設が取り組んできた新聞紙、アルミ缶、ペットボトルのリサイクル運動は、世界的な経済危機による影響に直面している。貿易統計によると、回収ペットボトルが含まれるポリエチレンテレフタレート(PET)は、08(平成20)年1~10月累計で中国向けが60%で香港向けをあわせると93%(約29万トン)に達していた。ところが、世界的な経済危機と原油価格の下落の影響で中国市場が停滞し、キロあたり85円だった買取価格が20円にまで暴落した。そのため、日本プラスチックリサイクル工業界は、死活問題と危機感を募らせている。同様の現象は、古紙、鉄スクラップ市場でも起こっており、キロあたり20円まで上昇した古紙価格は、4~5円まで急落している。また、トンあたり7万円まで上昇した鉄スクラップ価格は、約6分の1の1万2,000円程度まで落ち込み、資源リサイクルシステムが機能不全に陥ることが危惧されている。
(3) 各地の闘いの成果と課題
福岡県旧筑穂町の産業廃棄物最終処分場(安定型)から汚水が川に放流された問題について、08(平成20)年2月、福岡地裁は、処分場の放流水の化学的酸素要求量(COD)などが基準を超過していることを認定しながら、直ちに生命、健康に著しい被害を生じさせる恐れがあるとは認められないとして、住民の請求を棄却した。住民は、直ちに控訴して闘いを続けている。
岐阜県御嵩町の産業廃棄物最終処分場問題で、同年3月、事業者の寿和工業は、07(平成19)年12月の三者(岐阜県、御嵩町、寿和工業)合意に基づき建設許可申請の取下げ手続に入った。91(平成3)年に計画が発表されて以来17年目にして同問題は解決したが、元町長襲撃事件の真相は未だに解明されていない。
茨城県水戸市の産業廃棄物最終処分場(安定型)について、08(平成20)年5月、最高裁は、上告を受理しない決定を下し、水道水への影響が懸念されるとして建設差し止めを認めた東京高裁の判決が維持された。
熊本県水俣市の産業廃棄物最終処分場(安定型、管理型)計画について、事業者のIWD東亜熊本は、同年6月、事業計画の中止を発表した。同問題については、潮谷義子熊本県知事が、同年3月、環境影響評価(アセスメント)条例に基づき、同社の環境影響準備書に対して、地下水への影響、運搬車両の騒音、絶滅危惧種クマタカの棲息分布など11項目にわたる評価項目の追加と43項目にわたる改善要求を求める厳しい内容の知事意見を提出していた。同社は、環境影響評価の最終段階となる評価書の作成に数年以上要することなどから、事業計画の中止に追い込まれた。
千葉県富津市の産業廃棄物最終処分場(安定型)について、同年9月、千葉県は、事業主の浅野商事から事業計画の廃止確認申請書が提出されたことを明らかにした。同問題については、同年7月、最高裁が、廃棄物に混入した有害物質が地下水に染み出して汚染される可能性があるとして操業差し止めを認めた東京高裁の判決を支持する決定を下していた。
香川県は、同年9月の定例県議会で、豊島産業廃棄物処理事業について、廃棄物の推計処理量が7万6千トン増え66万8千トンになることを明らかにした。その結果、処理費用も70億円増加し350億円に達する見通しが示された。同県は、住民の理解を得たうえで処理計画を変更する予定である。
山口県美祢市の産業廃棄物最終処分場(安定型)について、広島高裁は、同年9月、建設差止の申立てを却下した山口地裁下関支部の決定を取り消し、建設差し止めを認める決定を下した。住民は、本訴を提起して建設中止に向けた闘いを続けている。
廃棄物最終処分場及び焼却施設については、建設計画や建設数が減少したことに伴い、反対運動や訴訟の数も減少傾向にある。しかし、埋立容量が少なくなりつつあることを背景として、大型の最終処分場の建設計画が立てられており、住民の生命、健康の維持と環境保全の確保を目的とした新たな闘いを続けていく必要がある。 こうしたなかで、熊本県水俣市において、事業者が計画中止に追い込まれた事例は、環境影響評価条例に基づき、県知事が厳格な運用を行えば、環境に悪影響を及ぼす廃棄物処分場の建設は不可能になることを示したものとして高く評価される。