内閣総理大臣 小泉純一郎様
平成15年度の施策の検討及び予算編成に当たっては、以下の事項の実現について、特段の措置を講じられたい。
5 自動車排出ガスに係る大気汚染対策の強化 |
都における大気汚染は依然として深刻な状態にあり、多数の健康被害が発生しているが、その根本的な原因は国の自動車排出ガス規制の遅れにある。
大気汚染の改善は一刻の猶予もならない状況にあるにもかかわらず、自動車NOx・PM法において、規制実施時期を延期し、経過措置を設けたことは、誠に遺憾である。
ついては、ディーゼル車等の自動車交通に起因する東京の大気汚染を早期に改善するとともに、健康被害車を救済するため、以下の措置を図ること。
1 排出ガス規制の強化等 自動車NOx・PM法の施行規則に定める経過措置を廃止し、排出基準非適合車の使用可能日を、当初示されたとおり、施行後最初に交付される車検証の有効満了日までとすること。
2 燃料対策等
(1) 50ppm以下の低硫黄軽油については、平成15年4月に全国供給が予定されているが、ガソリン車、ディーゼル車の更なる規制強化のため燃料の硫黄分の許容限度を10ppm以下に引き下げること。
(2)粗悪な軽油による環境悪化を防止し、流通形態の多様化に伴う脱税・滞納などの問題に対処するため、不正軽油の取締、製造・販売及び消費に対する罰則の強化などの措置を講ずること。
3 大気汚染による健康被害救済制度の創設
10月29日に東京大気汚染公害訴訟の判決が示されたが、被害者を救済するための制度を、国の責任で創設すること。その際には、メーカーの費用負担も含めて、国の責任で検討すること。
4 道路整備の促進
道路整備を促進すること。特に、大きな環境改善効果が期待できる都市高速道路中央環状線、東京外かく環状道路、首都圏中央連絡道路の、いわゆる3環状道路の整備を促進すること。
知事所信表明
東 京 都
(大気汚染公害訴訟への対応)
このような中、10月29日に、大気汚染公害訴訟の第一審判決がありました。大気汚染が、原告の方々をはじめ、多くの都民の生命と健康を蝕んでいることに対しては、行政の対応がこれまで不十分であった点を重く受け止め、心からお詫び申し上げます。これもひとえに、国が正当な状況認識を持たないまま無為無策を続けてきたことに起因しております。そこに問題の本質があるにもかかわらず、今回の判決は、国の排出ガス規制責任を一切認めておりません。最も重大な論点に目をつぶってものと言わざるを得ず、到底承服できるものではありません。
その一方で、誰もが被害者であると同時に加害者でもある大気汚染は、裁判で対応可能な範囲を超え、社会全体の問題として捉えるべき段階を迎えております。これ以上裁判を長期化させても、大気汚染を解決することはできず、健康被害者の救済を先送りするだけであります。
今必要なことは、裁判で原告の方々と論争することではなく、国と直接対決し、国の政策を転換させることであります。したがって、判決内容を不服とする中での異例の措置となりますが、抜本的解決を優先させるため、控訴しないとの判断を下しました。