公害・地球環境問題懇談会 事務局長  白川博清

1 公害・地球懇の活動の柱

 公害・地球懇は2002年度総会で年間の活動計画を決めた。
 そのうち、とりわけ重視した活動は、①2002年度の最大の課題である東京大気汚染裁判の勝利をめざす活動をどう展開するかであり、②道路公害、ムダな公共事業の見直しを運動として発展させる活動であり、③地球温暖化の条約批准を推進し、国内政策の充実を求める活動も重視し、④公害・環境問題に関する小・中学校からの問い合わせが増えていることをふまえ、学校での総合的学習にも使える副読本づくりを企画し、実施にうつすこと、⑤政策提言活動を一層強化すること、⑥ホームページと公害・地球懇のニュースの一層の充実をはかること、などであった。

2 この1年間の活動の展開

(1) 東京大気汚染公害裁判の勝利判決を獲得するために、公害・地球懇はどのような活動を行って、勝利に寄与していくか、これが2002年度の公害・地球懇の最大の課題であった。
 結審-公害総行動-判決という流れのなかで、公害・地球懇としては、①原告団などと協力して、事前のオルグ活動を共同して行う、②事前のメーカー交渉および判決時行動のなかで展開される交渉に協力し、強力な交渉のために役割を果たす、③一連の行動に関連して、公害・地球懇の事務局次長清水氏を公害・地球懇の立場で東京大気運動の推進のために送り込むといった活動を行った。
 10月29日の判決については種々の評価があろうが、判決行動は多くの人々の共同したたたかいがあって、今後の解決につながる交渉ができたことは成果であったと評価している。
(2) 公共事業を再考させ、川辺川利水訴訟を勝利させる活動 川辺川ダムなどダム建設問題、圏央道関係(高尾山の自然を守る運動と裁判、あきる野市牛沼強制収容問題、横浜外環道路など)の道路公害など、公共事業の見直しを迫る運動が活発に行われている。
 公害・地球懇は、各地で公共事業の名による環境破壊、予算のムダ使いなどに対決して運動を展開している運動体があるが、こういった運動をつなげて、公共事業による被害者の運動を一層強力なものとしていくねらいを持って活動を行っている。
 とりわけ川辺川利水訴訟が結審(2003年1月24日)、判決(同年5月16日)を迎え、最終的には東京での運動を一層強化しなければならないと考え、その活動の一環として、2002年11月16日に「ダムもいらん!トンネルもいらん!」を合言葉に「公共事業再考シンポジウムを行った。このシンポは、直接的には川辺川利水訴訟やダム事業認可の取消訴訟の原告団(農民と漁民)と高尾山の圏央道問題でたたかっている人たちをむすびつけて公共事業の見直しの世論を盛り上げることを目的として取り組んだのですが、さらに利水訴訟に勝利して川辺川ダム建設を断念させるためには、首都東京での判決行動が決定的に重要となるわけで、そういった東京での運動作りの基盤をつくることも目的とした。
 なお、毎年、水俣と川辺川をむすぶエコツアーを行っており、今年も実施したし、本年3月の公害弁連総会時にもエコツアーを企画している。
(3) 連続市民講座の開催
 公害・地球懇は従来から毎年市民講座を開催し、環境問題、公害問題をとりあげた市民にも分かりやすい啓蒙活動を行ってきている。
 こういった活動の一環として、今年は次のような市民講座を企画している。
① テーマ「食の安全を保つために-環境、食料問題とのかかわりで考える」
   講師:岩田進午(元茨城大学教授、日本科学者会議事務局長)
   サブ講師:清水鳩子(主婦連副会長) 消費者の立場での問題提起
   なお、この講座は病体生理研究所との共済で行った。
② テーマ「公共事業と環境破壊(仮題)」
   講師:中山 徹(奈良女子大学助教授)
   日程:3月1日(土)
   場所:「家庭クラブ会館」(西新宿)
③ テーマ「地球温暖化防止の取り組み(仮題)」
   講師:早川 光俊弁護士
   日程:2003年5月17日(土) 午前10時~
   なお、この日は午後に公害・地球懇の総会を行います。
④ テーマ「環境保全型社会をめざす集い」
   講師:寺西 俊一(一橋大学教授、日本環境会議事務局長/交渉中)
   日程:2003年6月21日(土)
   場所:横浜市従会館
   なお、この企画は自治研集会のプレ集会(環境分科会)という位置づけで開催します。
(4) いくつかの話題
  ・公害・地球懇には全国で一つだけ支部があります。公害・地球懇八戸支部です。公害・地球懇八戸支部では、地元の団体と協力して青森・岩手県境に違法投棄された産業廃棄物問題に取り組んでいます。豊島をはるかに超える産廃量が違法投棄されており、地元の処理業者は倒産しているという困難な状況のなかで奮闘しています。
  ・公害・地球懇への相談事例のなかで、北海道虻田町の教員から地元の土地開発公社が造成した土地を入手し、家を建築したところ、この土地が産業廃棄物の跡地を造成したもので土壌汚染地であったことから、臭気、ガス、白濁した地下水などの被害を受け、妻は病気となり、到底住めない家であることが判明したが、どうしたらよいかという相談でした。

 公害・地球懇では、早速日本科学者会議と連絡をとり、神山北大名誉教授の力を借りて、土壌検査を実施させ、ついに虻田町から補償を勝ち取ることができたのです。
 公害・地球懇は、しかめつらしい活動ばかりを行っているのではなく、各地でいろんな活動を行っていることを紹介して、今後とも精一杯の活動を展開したいと考えていることを付け加えて、報告にかえます。