新嘉手納基地爆音訴訟弁護団


 2002年は,3月6日に小松で,5月30日に横田で,10月16日に厚木で,各基地訴訟判決があり,新たに普天間基地訴訟が提訴されるなど,重要な節目をむかえる年となりました。いずれの判決も国を大きく追いつめる成果であり,基地公害に苦しむ各地の訴訟団を勇気づけるものでした。各訴訟団の皆様,ひとまず,お疲れ様でした。
 新嘉手納基地爆音訴訟は,2000年3月21日の提訴から3年を経過しようとしており,いよいよ終盤の重要な局面をむかえております。各地の基地公害訴訟団の成果を生かしつつ,更なる前進,米軍機の夜間早朝飛行の差し止めを勝ち取りたいとの思いです。
 以下に,新嘉手納基地爆音訴訟のたたかいの経過を報告します。


 新嘉手納基地爆音訴訟は,2000年3月21日に提訴されました。原告数は5541名。夜7時から翌朝7時までの米軍機の飛行の差し止め,過去と将来の損害賠償を求めています。また,横田基地公害訴訟団と同様に,アメリカ合衆国を被告とする対米訴訟も行っています。
 2000年9月28日に第一回口頭弁論をむかえ,2001年9月13日の第七回口頭弁論から,本格的な立証を開始しています。新嘉手納基地爆音訴訟の醍醐味は,何よりも,重厚な立証にあります。
 まず,2001年9月13日には,沖縄大学教授の新崎盛暉先生に,沖縄戦や沖縄の米軍基地の形成過程等について証言していただきました。
 次に,2001年10月25日,12月6日の両日にわたり,嘉手納基地周辺の六ヶ市町村の代表として,原告本人6名が日常生活における爆音の生活妨害,健康被害を陳述しました。
 そして,2002年1月24日には,元読谷村長の山内徳信さん(原告本人)に嘉手納基地が地域自治に及ぼす影響について陳述していただきしました。
 また,2002年3月7日には,琉球大学教授の高良鉄美先生に,米軍基地のもたらす被害や平和的生存権の憲法的意義について証言していただきました。
 そして,2002年6月13日には,嘉手納中学校と嘉手納小学校の先生に,爆音による授業妨害,児童・生徒に与える影響について証言していただきました。
 また,2002年9月26日には,沖縄国際大学教授の石原昌家先生に,沖縄戦後の住民移動の歴史,土地に愛着する住民意識等について証言していただきました。
 そして,2002年11月7日には,午前に武庫川女子大学教授の平松幸三先生に,沖縄県健康影響調査の意義,騒音曝露の実態,住宅防音工事に効果がなく被害の軽減とならないことを証言して頂き,午後に旭川医科大学講師の松井利仁先生に,沖縄県健康影響調査のうち,爆音のもたらす生活質・環境質の影響,幼児問題行動に関する影響,学童の記憶力に関する影響,自覚的健康観に及ぼす影響,血圧等への身体影響,低出生体重児の調査結果について証言して頂きました。
 さらに,2002年12月19日,2003年1月30日の両日にわたり,最激甚地区である北谷町砂辺の原告本人4名が騒音性の聴力損失の被害を明らかにしました。
 また,2003年3月6日には,沖縄県立中部病院の與座朝義先生に,騒音性聴力損失の診断について臨床学的見地から証言して頂き,京都大学名誉教授の山本剛夫先生に,騒音性聴力損失の原因等について医学的見地から証言して頂く予定です。
 今後は,夏頃の検証を経て,2003年中の結審を目指す予定です。


 上記のとおり,新嘉手納基地爆音訴訟では,2003年11月から,本格的に健康被害の立証を行っています。
 健康被害立証の拠り所となるのは,言うまでもなく,沖縄県健康影響調査です。これは,1995年度から1998年度にかけて,沖縄県が財団法人沖縄県公衆衛生協会に委託して実施した航空機騒音による健康影響の調査で,世界にも類を見ないほど大規模かつ高水準の包括的調査です。
 基地周辺住民の生活妨害の実態,幼児・成人に対する身体影響,学童の長期記憶に及ぼす影響,低出生体重児の出生に関する影響,騒音性聴力損失被害の存在などを克明にしています。
 新嘉手納基地爆音訴訟は,沖縄県健康影響調査の結果を全面に押し出して,基地周辺住民の健康被害を明らかにする決意です。健康被害を認定させることができれば,米軍機の夜間早朝飛行の差し止めも勝ち取れると確信しています。
 新嘉手納基地爆音訴訟の原告団・弁護団は,米軍機の夜間早朝飛行を差し止め,更なる健康被害の拡大を食い止めるため,ラストスパートに入ります。
 なお,沖縄県健康影響調査の結果は,ホームページでも掲載されていますので,ご参照ください。 【http://www.pref.okinawa.jp/okinawa_kankyo/souon/index.html