差し止め判決・和解後の大型車低減・交通規制をめぐる今後の課題
(1) 阪神高速3号神戸線と5号湾岸線において、料金に格差を設ける環境ロードプライシングを早期に試行的に実施すること。
(2) 本件地域における大型車の交通量低減の必要性を理解し、大型車の交通規制の可否の検討のために必要な交通量の調査を平成13年度までに着手するとともに、本件地域における大型車の交通規制の可否の検討について、早期に検討結果が出るよう警察庁に要請すること。ところが国、国交省は(2)について「連絡会」での意見交換をまともにせず、一方的かつ不十分な交通量調査のもとに、43号線の交通規制は不可能との兵庫県警の回答結果を伝えただけでした。怒り狂った原告団と弁護団は大気連での議論を踏まえ、公調委に和解条項履行にかかるあっせんの申立をし、あっせん合意が、2003年6月26日(高裁和解は2000年12月8日)に成立しました。
3 公調委の「あっせん」合意
ここでも「あっせん」の合意内容を振り返っておきます。
(1) あっせんの趣旨
本件地域の汚染実態は、環境基準がなお未達成であるなど依然として改善されていない状況にある。和解当時の精神に立ち返り、相互の理解と協力により、より良い沿道環境の実現に向けて努力する。(2) あっせん事項
@ 大型車の交通量低減のための総合的な(再)調査の実施 大型車の交通量低減のための施策を総合的かつ効果的に進める観点から、大型車の運行経路、運行経路選択要因等に加え
- 大型車の運行実態(頻度、時間帯など)
- 車輌の年式
- ディーゼル微粒子除去装置装着の有無
- 環境ロードプライシングの試行内容の充実や交通規制が実施された場合の運行径路選択にかかる意向等
に関する調査を実施する
A 環境ロードプライシングの試行
@の調査結果を分析評価すると共に、あらたな取り組みについて交通量や環境への効果・影響を調査検証する社会実験の活用などにより主体的に検討を行い、本件地域における大型車の交通量を低減する観点から、試行内容の一層の充実を図ること。
B 大型車の交通規制の可否の検討に係る警察庁への要請
@の調査結果をとりまとめ、本件地域における大型車の交通量を低減する観点から、大型車を対象とした限定的な交通規制を実施することについて、当該調査結果の提出と併せて、警察庁に対し追加的検討を要請すること。
4 「あっせん」合意後の経緯
04年6月に公調委で成立した「あっせん」合意により、「連絡会」が公開され、公開「連絡会」で懸案の「大型車交通量低減のための総合的調査」に向けた協議が開始されました。その後の「連絡会」日程は以下の通りで、12月21日で21回(あっせん合意後は18回)を数えます。
第3回 03年9月30日■ 3月3日から4日まであっせん事項・の総合調査(再)を実施
第4回 同年12月18日
第5回 04年2月24日
第6回 04年4月23日
第7回 同年 6月13日
第8回 同年 7月28日
第9回 同年 9月21日
第10回 同年11月 5日
第11回 05年1月21日
第12回 同年 6月 2日■ 3月11日から18日まで阪神間交通量調査(県警からの要請)
第13回 同年 9月16日
第14回 同年11月16日
第15回 同年12月21日
第16回 06年2月9日
第17回 同年 4月10日■ 2006年6月12日午前0時から8月21日24時まで、「あっせん」合意事項・のロードプライシング試行(社会実験)
第18回 同年 6月21日
「あっせん」合意・の警察庁への検討依頼文書提案
第19回 同年9月13日
第20回 同年10月31日
前記「社会実験」速報値についての報告と説明
第21回 12月21日
ロードプライシング試行「社会実験」結果まとめを報告5 連絡会での課題・問題
(1) 国との和解後、道路沿道改善を掲げた「連絡会」を21回も開催しているのは尼公害道路公害訴訟だけであり、正に差し止め判決の成果ですが、高裁和解から6年、「あっせん」合意から3年半を経たにも関わらず、大型車低減施策は前記の通り、試行段階であり、本格的低減策実施は緒に就いたばかりです。この間、大型車低減の削減目標値に関する問題(01年2月調査の3万9557台の大型車をどの程度削減するのか)、43号線の交通規制区域の拡大問題(尼崎地域に限定しない)、ロードプライシングの内容の充実(どこから乗っても全て半額にする)と東線問題(湾岸線の武庫川以東も無条件で対象とする)等で、前記再調査やロードプライシングの試行は暗礁に乗り上げそうになり、その都度ねばり強く協議(意見交換)してきました。その甲斐があって、2007年からいよいよ具体的低減施策の実行について協議が始まります。その概要・課題は以下のとおりです。(2) 詳細は別に報告しますが、「あっせん」合意に基づく交通量再調査やロードプライシングの試行(社会実験)により、以下のことが明らかになりました。
- 43号線道路沿道は現在も深刻な汚染が続いており、その改善は急を要すること。
- NO2やSPM濃度と大型車交通量は比例関係があり、沿道汚染の主要な汚染源は大型車交通であるから、その交通量を減らせば汚染は改善できる。
- 前記ロードプライシングの試行(ETC料金大型車で五号湾岸線西線―東線1200円割引)実験による交通量変化は増減率で見ると、国道二号線、43号線はほぼ予想通りの効果、三号神戸線(これら三つの道路は阪神地域をほぼ平行あるいは二階建て構造で走行)は予測の二倍の効果、結果として湾岸線への交通量転換は、予測通りか予測より少し大きい効果が得られた。
- 前記社会実験対象のETC料金大型車は、43号線全大型車交通量の半分、三号神戸線の全大型車交通量の3割であること。
- 最もNO2濃度の高い東本町測定所の同濃度日平均98%値を60ppbに改善するには43号線及び三号神戸線の全大型車交通量を25%削減する必要があること。
(3) 以上で明確になった点に基づき、今後(本年)連絡会で、大型車交通量を25%削減削減する方策として以下の通り提案する予定です。
- ロードプライシングの試行充実
ア 対象車を料金大型車だけではなく全大型車に拡大する。
イ 湾岸線東線の割引対象区間を拡大する。
ウ 料金割引には三号神戸線の料金割増との組み合わせも考える。- 1.の施策と交通規制を合わせたパッケージ施策の実行
ア ナンバープレート規制とロードプライシング試行とのパッケージの効果は、調査結果から予測すると16〜25%の削減効果がある。車線規制との同効果は11〜19%に削減効果があるとされている。