日韓弁護士・漁民・市民シンポジウム報告
よみがえれ!有明海訴訟弁護団
弁護士 後藤富和
平成17年12月9日、よみがえれ!有明海訴訟弁護団と韓国のセマングム干拓事業差止弁護団が合同で、「日韓弁護士・漁民・市民シンポジウム」を開催しました。
韓国からは、朴泰R(パクテヒョン)弁護士(環境運動連合環境法律センター副所長)、丁南順(ジョンナムスン)弁護士(環境運動連合環境法律センター)、李昇ミン(イスンミン ミンは日へんに文)氏(環境運動連合市民環境研究所研究員)、朱ヨンギ(ジュヨンギ ヨンは金へんにナ+甫、ギは金へんに其)氏(全北環境運動連合政策室長、セマングム生命平和全北連帯執行委員長)、劉奇化(ユギファ)氏(セマングム漁民・ハマグリ漁)の5名(男性2名、女性3名、全員30歳代)が来日しました。
このシンポジウムは、公害弁連がすすめてきた国際連帯・交流活動の結果、実現したものです。すなわち、平成17年8月25日から29日にかけて、公害弁連・環境法律家連盟の弁護士、研究者、支援者、原告らで韓国を訪ね、ソウル市内での日韓交流シンポ、セマングム干拓現場の視察を行いました。この時、馬奈木昭雄弁護士の「私たちは負けない」「勝つまでたたかい続ける」との報告に感銘を受けた韓国側弁護団から、ぜひ、日本を訪問して、弁護士と研究者、そして当事者たちの戦いと団結を学びたいとの強い要望があり、実現したものです。
セマングム弁護団らは、9日の午前中、よみがえれ!有明海訴訟の佐賀地裁での本訴を傍聴しました。丁弁護士は、「漁民たちの意見陳述が大変勉強になりました。」「漁民たちが自分たちの仕事をいかに誇りに思っているのか、意見陳述の中から良くわかりました。」と韓国の法廷では、なかなか認められない原告の意見陳述に感銘を受けた様子でした。
同日午後からは、佐賀市民会館において、「日韓弁護士・漁民・市民シンポジウム」を開催し、冒頭、関島保雄公害弁連幹事長の激励メッセージでシンポが始まりました。
前半、熊本県立大学の堤裕明教授による基調講演「有明海奥部海域の赤潮と貧酸素化現象のメカニズム」を行い、引き続き、朴弁護士による報告「セマングム干拓の現状と課題」、馬奈木弁護士による有明海訴訟の報告を行いました。後半は、日韓の漁民・弁護士・市民の活発な意見交換を行いました。
その中で、セマングムの漁民劉さんは「堤先生の話を聞いて、自分が体で体験してきた海の仕組みを科学的に説明してくれたと感じました。」「有明海漁民の発言を聞いて、国は違っても自分と同じ気持であることが分かりました。」と感想を発表しました。日本の漁民たちも、「8月に韓国に行って、セマングムで自分たちが小さかった頃に見たトビハゼが跳ねる海を見た。セマングムにはまだかつての有明海のような干潟が残っている。これは絶対に残さなくちゃいけない。」と発言し、日韓の連帯はより一層深まりました。
翌12月10日には、諫早湾干拓現地調査を行いました。
まず、干拓現場のフェンスまで行き、目の前で行われている実際の工事の進捗状況を確認し、さらに、干拓地に足を踏み入れるなどしました。
とりわけ、調整池の水質については、その汚濁度の高さに、セマングム弁護団らは一様に驚きを隠せない様子でした。
昼には、有明漁民の紹介で、有明海では激減した貴重な牡蠣を焚き火で焼いて味わいました。セマングム漁民の劉さんが牡蠣をさばく慣れた手つきに参加者から驚きの声が上がりました。
午後は、漁業被害が最もひどい地域といわれている佐賀県大浦町の漁民たちと交流し、意見交換した上、諫早湾干拓潮受け堤防のすぐ傍まで漁船で向かいました。
漁船に乗り込むと、余りの寒さに、日韓の弁護士は震えだしましたが、さすがに漁民の劉さんは平気な様子で、一同、漁業の厳しさを身をもって体験することが出来ました。
有明海漁民からは、漁に出ても燃料代すら稼げない現状、そして、ダイナマイトを船にくくりつけて潮受け堤防を爆破してやりたいという無念の思いについて報告があり、日韓の参加者は戦う決意を新たにしました。
日韓の「宝の海」の再生に取り組む弁護団が、連帯を強め、ともに勝利を勝ち取る日まで戦い抜くことを誓い合い、日韓の交流は、大成功のうちに幕を閉じました。
最後に、本シンポジウムの実現のために、公害弁連加入の弁護団、原告団、支援の会から多大なる資金援助をいただきました。まことにありがとうございました。