1、地球温暖化と京都議定書について
去る7月6日から、英グレンイーグルズで開かれた、主要先進国首脳会議(G8サミット)において、「地球温暖化・京都議定書」が議題として取り上げられた。
この会議の議長総括によれば、「G8首脳は新興経済国の首脳らを交えて議論。人間活動が原因の温暖化は今起きており、地球のあらゆる場所に影響を及ぼす可能性がある」という点で合意した。
今回合意した行動計画によって、クリーンエネルギー技術の市場を発展させ、途上国の活用を促進する。
今年後半モントリオール(カナダ)で開催する国連気候変動会議で世界的な努力を前進させる。京都議定書を批准した国は、その成功に向けて引き続き取組むと。
そもそも京都議定書は、1997年12月採択され、08年ないし12年の先進国の温室効果ガスの排水量を90年比で5%以上削減すると定めている。
この議定書に対し、大排出国であるアメリカが、2001年3月これを離脱した。
これに対し、地球温暖化がすすむ現在、今年2月発効した京都議定書を実効あらしめたいという世界の世論の高まりを無視できず、G8がこれを取上げたのは当然の成行きである。
アメリカの一国支配的横暴さは、今や全世界的に孤立しようとしていることを示したものであるが、それだけではない。
本年6月13日シカゴで開かれた、全米市長会議は、地球温暖化防止のために、京都議定書が定めた目標を、米政府が達成することを求めるとともに、自治体レベルでも目標到達を目指すことを支持する決議を全会一致で採択した(朝日新聞2005年6月16日)。
このようにして、京都議定書は、アメリカを含む全世界規模で実施されようとしている。
2、戦争と公害
今年は、第2次世界大戦の終結、国際連合憲章の採択と国連の発足から60年になる。
思えば、戦争の目的は、武力で相手方を制圧することであるから、環境保護や人権はまったく無視される。
ところで、9・11事件を機会に、アメリカのブッシュ政権は、イギリスのブレア政権を引きこんで、国連憲章を無視して、イラクへの侵略戦争を強行した。
この戦争は、開始以来3年余を経過するのに泥沼化しており、いつ果てるとも知れず、かつてのベトナム戦争と同様の様相を呈している。
そのため、メソポタミア文明の発祥地イラクは、その遺跡も環境も滅茶滅茶に破壊され、 イラクの国民、殊に女性と子ども達は塗炭の苦しみにあえいでいる。
然も、わが日本の小泉政権は、アメリカのブッシュ政権の忠犬よろしく、その言いなりになり、政治、経済、軍事いずれにおいてもその自主性を失ない、かつて第2次大戦において、日本国民のみならず、アジアの数千万人の生命を奪った、侵略戦争と植民地支配の反省と謝罪にもとづく、日本国憲法を無視して、自衛隊のイラク出兵を強行している。
それだけでなく、自民党政府は、公然と日本国憲法の改悪を唱えている。その一部に環境権を云々しているが、これは誤魔化しにすぎず、現行憲法25条(生存権・国の社会的使命)のなかに環境権が包含されることは明白である。
3、戦前に関していえば、そのもっとも破壊的な害をなすものが核兵器である。
広島・長崎に原爆が投下されてから、今年は60年になる。
核兵器については、1961年11月24日国連総会の核兵器使用禁止決議、1996年7月8日国際司法裁判所の、核兵器の使用が国際法に反するとの勧告意見、1968年6月19日非核兵器国の安全保障に関する決議等がある。
そして、1968年7月1日、核兵器不拡散条約(NPT)が締結されている。
NPTについては、2000年の再検討会議において、核保有国が核兵器廃絶の明確な約束をしたのであるが、今年5月ニューヨークでひらかれた再検討会議は主にアメリカの妨害により、不毛におわっている。
このような経緯により、ヒロシマ・ナガサキから60年の今年、2005年、原水爆禁止世界大会に全世界から結集した人々は、今こそ核兵器廃絶の時機であるとし、世界市長会議議長の、広島市長秋葉忠利氏は、今後の1年を決意の年として、核兵器廃絶のための日程を組むと宣言している。
4、軍事基地による環境破壊
日米安保条約にもとづく、米軍の日本駐留がいかに、環境を破壊しているかは、これを喋々するを要しない。
私は先日参加した、2005年原水爆禁止世界大会において提出された「フィリピンの元米軍基地における環境被害の実態」(水谷奈美子著)により、大きな衝撃を受けた。
フィリピンは1991年ないし92年にクラーク空軍基地、スービック海軍基地を米軍から返還を受けたが、アメリカは返還の際、原状回復の義務はないとしている。そのため、上記両基地周辺では、想像を絶する深刻な汚染被害が発生しているとのことである。
これは、日本にとっても他人事とすまされない。
5、環境問題の今後の見通し
地球温暖化に示される地球環境問題は、これをつきつめてゆくと、アメリカの力づくの一極支配に帰着する。これは果たして克服できないものであろうか。
そうではない。
そのきざしは、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの諸国の、近年の目ざましい発展と、反米の動向にあると思われる。かつて、アメリカの裏庭といわれた、ラテンアメリカにおいて、次のような事態が発生した。米国のフロリダ州で本年6月上旬開催された米州機構(OAS)第35総会において、各国の民主主義が機能しているかどうかを監視する仕組をつくるというアメリカの提案が、出席した加盟国34ヵ国の8割の国から明確に拒否され、葬り去られた(2005年8月6日「しんぶん赤旗」)。
これはひとつの例であるが、アメリカの力による一極支配の野望は、内外とも孤立しつつある。
私達は、近未来に明るい展望をもつことができると期待したい。
6、おわりに
巻頭言を書くように求められた私であるが、平生の活動がいちじるしく欠けており、内心忸怩たる思いで、これをものした。
今や環境問題は、最近問題化されたアスベスト問題を含め国内的にも重大化しており、公害弁連に結集する皆様の肩に背負わされている問題は、重くかつ多大である。
今後の一層のご健闘を期待して筆をおくこととしたい。