4 この結果をうけて、ぜん息救済連では請願内容の実現をめざして、署名の目標達成にひきつづき全力投球すること(残約2万名)、川崎市交渉(できうれば市長交渉のセット)を行うこと、全ての全派面談(勉強会)と積極的支援の要請を行うこと、キーポイントになる川崎市医師会との友好的な関係の確立を行うこと、川崎南・中・北部での統一的大衆的宣伝、学習会等の行動を展開すること、マスコミ対策を重視することなどを当面の目標にあげ、取組みの強化を確認している。
年明けの議会との関係でいえば、2月以降の審議が重要視される関係上、来年1月31日には、この問題の学習と斗いの経験交流をメインに「新春のつどい」を開催することとした。
同時にこの課題は、補償法制度の再構築につなげる課題であり、川崎市の運動体としては、全国の患者会、全国の大気汚染問題と取組む原告団、弁護団、そして、全ての公害環境問題に取組む諸団体、諸組織にも幅広く共斗を呼びかけ、まず、川崎からその突破口を開こう!を合言葉にお互い奮闘しあうことを誓いあっている。
公害弁連のプレシンポジウムとして、2003年10月5日、東京において「差止裁判プレシンポジウム」が開かれた。このプレシンポの目的は、大気汚染訴訟や廃棄物処理場で差止判決が相次いでいる中で、「差止めを定着させる闘いをどう作るか、議論をすすめ、差止めを定着させよう」(近藤忠孝弁護士の挨拶)ということにあった。オブザーバーとして広島大学教授の富井利安先生もお招きして議論をした。
福岡の馬奈木弁護士から、産業廃棄物裁判について報告を受けた。産業廃棄物の訴訟にうち、産業廃棄物の最終処分場は作らせていない闘いがかなり定着している。しかし操業の差止め、焼却施設の差止めは小型の従来型については差止め例があるが、大型溶融炉の建設差止めは困難であるとのことであった。操業している施設については、健康の危険性がどこまであるのか不明であるという反論、ないと町にごみがあふれるという反論にどう対抗していくかが課題となっており、この点は公害訴訟と構造は同じように感じられた。
次に道路の関係では、大阪の村松弁護士から神戸西須磨の公害調停事件の報告があった。調停では調停を打ち切らせないねばり強い交渉、調停外では自治会やそのほかさまざまなルートで交渉をもち、運動をひろげて、差止を実現していく手法が報告された。名古屋の岩井と樽井弁護士からは、名古屋の環状2号線の公害調停事件の報告をした。同じ公害調停を使って道路建設の差止めを求める手法であるが、道路の規模や公害調停の調停委員会の対応から、大阪とは違い課題が大きいと報告した。調停の位置づけについて意見が交換された。
道路の関係では高尾天狗裁判について関島弁護士から報告があり、公害だけでなく環境の観点からのさまざまな主張をされている点が興味深かった。個人の被害ではなく、全体の人のための自然、都会の人が訪れるための自然の意味を問うものであるが、これを同裁判において主張する権利として結実させるかが課題である。これに対する、富井先生からのコメントで、景観の法的保護に関して、個人の権利を超える「公共的利益」というものを想定し、この公共的利益を個人が享受できる権利として構成するアプローチが紹介された。国立市景観訴訟において富井先生は意見書を作成しており、大変興味深かった。
道路に関しては、このシンポの2日前である10月3日、あきる野の代執行手続の手続の停止が認められこの報告もなされた。
よみがえれ有明訴訟について、福岡の堀弁護士、高橋弁護士から報告があった。有明訴訟は、豊饒の海である有明海が干拓事業により崩壊していることから、全体の環境を守る必要があることを主張の骨子として闘っている。ここではどう個人の権利と全体の環境の保全を結びつけていくかが課題とされているとのことであった。ここでも「公共的利益」の考え方が参考になるだろう。
川辺川訴訟について、熊本の森弁護士から報告があった。5月の高裁勝訴以降の動きについて報告があったが、引き続きダム建設阻止のために弁護団が地域に入り、精力的に活動している報告があり、裁判だけでなく運動を組織していく活動を実行していく弁護団に感心した。ダムについては徳山ダム弁護団から書面で報告があった。
大気汚染訴訟については、尼崎弁護団の羽柴弁護士から報告があった。羽柴弁護士からは差止を勝ち取った尼崎判決の解説と、その後の和解条項が守られないことから提起された公害調停のあっせんの合意についても報告があった。連絡会も含め、画期的な差止判決だけでなく、その後の「差止」を実現していく運動の経過も報告された。東京の小海弁護士から東京大気裁判の報告があった。東京裁判では差止めが認められなかったが、このことについての分析、控訴審に向けた反論の内容が報告された。議論としては、尼崎、名古屋と差止が認められ、前進してきた中での後退であるが、さらなる前進をするためよりいっそうの議論をしなければならないという指摘があった。
最後に富井先生には、「具体的に力のこもった詰めた議論が参考になった。差止めは研究者も興味をもっている。環境権は、人格権で足りるという議論も変化しつつある。」というコメントをいただいた。板井幹事長が、差止めについて、公害弁連が攻め込み前進している。基地公害についてはふれられなかったことは残念だが、これらを含め被害者、地域住民を含めた本格的な差止シンポを開きたいと締めくくって閉会した。
普段は、このように詰めた形で議論していない異なる種類の弁護団の活動も参考にできた。闘いは様々な形で行われており、けして差止判決だけが「差止」の方法ではないことを強く感じた。また、「公共的利益」という新しい理論を学んだことも大きな成果だった。
【若手弁護士奮戦記】
普天間基地爆音訴訟
弁護士 金高 望
1、はじめに
私は、この原稿を書いている2003年12月現在で弁護士になって約2か月。「東京から普天間基地爆音訴訟弁護団に参加している変な奴がいる」と公害弁連の方の目にとまって、執筆の機会を頂くことになったわけですが、まだまだ「奮戦記」を書くことができるような奮戦はしておりません。したがって、この文は、今後奮戦する(であろう)者の決意表明として読んで頂ければ幸いです。
2、那覇修習・「爆音」体験
私は、1年間の実務修習を沖縄で過ごしました。沖縄の自然、音楽、食べ物、泡盛、そして気さくな人達に魅せられ、「沖縄病」に罹患するまでほとんど時間は必要ありませんでした。
他方、沖縄の米軍基地はとても存在感があります。那覇空港から那覇へ続く道の左側には軍港、那覇から国道58号線を北上すると両脇に基地が延々と続きます。沖縄の地元紙「琉球新報」「沖縄タイムス」に米軍に関する記事が載らない日はないほど。私は沖縄に来て初めて、米軍機が頻繁に不時着していることを知りました。基地の外の畑で米軍の弾丸が発見され、大騒ぎになったこともありました。沖縄では、本土では報道されない米軍に関する様々な、そして多くの事件が発生しています。
那覇は普天間・嘉手納両基地から若干離れており、騒音に悩まされることはそう多くありません。それでも時々爆音を轟かせる軍用機が頭上を通ります(自衛隊機もありますが)。そして、国道58号線を北上したときに時々遭遇する普天間・嘉手納の爆音…
さすがの沖縄も海に入ることができなくなった冬、弁護士の紹介で嘉手納基地爆音訴訟の原告の方の家に泊まるという体験をさせて頂きました。いつまでも止まらないエンジン調整の音、時おり響く軍用機・ヘリコプターの騒音。夜闇の中、ぼおっとオレンジ色に染まった嘉手納基地からまさに「爆音」が響いてきました。これは想像以上だ…
3、 本土との温度差
沖縄では旧態依然とした開発による環境破壊が続けられ、整理縮小するはずだった米軍基地がいつまでも居座っています(リーフ上に新たな基地を作るなどもってのほかですが)。他方で、基地や公共事業がなければ経済が成り立たないという現実もあります。沖縄をここまで追いつめたのは誰だろう。
沖縄の基地問題を考えるとき、沖縄の問題に対する本土の者の冷淡さを感じずにはいられません。本土は今表面的には「沖縄ブーム」ですが、沖縄の「負の側面」ときちんと向き合っているだろうか。沖縄に負担を押しつけていることを分かっているだろうか。沖縄の「負の側面」など、本土ではほとんど報道されません。大和人(ヤマトンチュー)の1人として、沖縄人(ウチナンチュー)に申し訳なくなります。
4、 普天間弁護団への参加・これからの活動
私は修習中に普天間弁護団から声をかけて頂き、東京から参加することにしました。なぜ普天間なのか?これまで書いてきたような沖縄の基地問題に対する思い入れもありますが、「裁判がまだ始まったばかりで、自分の活動できる余地が多分に残っているのではないか」「弁護団に若い顔なじみの弁護士が多いので、自分も積極的に活動できるのではないか。」という憶測がありました。
弁護団会議等のため、11月に2度沖縄へ行きました。今のところ、先行する第2次嘉手納訴訟で裁判所がたてこんでいること等の理由により、裁判はあまり進んでいません(裁判所の怠慢とも言えますが)。そして何より、普天間では国と海兵隊司令官個人を被告としていますが、米軍が訴状の受取を拒否し、提訴から1年以上が経過してもまだ司令官に送達できていない (これが裁判所最大の怠慢。裁判所は米軍になめられている。) そういう状態ですので、私が実際に「奮戦」することになるのは、もう少し先になりそうです。まずは先輩方が勝ち取ってきた業績を勉強することからスタート。そして、せっかく東京にいるのだから、各地の爆音弁護団にも顔を出させて頂けたらと考えています。
静かな夜を返せ!
この当たり前の要求が1日も早く実現するよう、微力ながら頑張っていきたいと思います。
第2回環境紛争処理〈日・中〉国際ワークショップ熊本にご参加ください
幹事長 弁護士 板井 優
1、 来春3月20日・21日熊本開催
去る10月の日本環境会議滋賀大会では、日本、中国、韓国から弁護士や研究者が大挙して参加し、終了後も公害弁連の呼びかけで意見交換会が行われました。本来、昨年3月に、第2回環境紛争処理〈日・中〉国際ワークショップのプレ企画が熊本で開かれる予定でしたが、昨年末からのサーズ問題で中止となったままになっていました。
そこで、滋賀大会を機に近いうちになんとか開こうということで話がまとまり、現在までのところ、関係者で作業がなされています。
2、準備状況
現在まで、準備状況は大筋次の通りとすることになりました。
3月18日 夜 | 水俣被害者交流会(水俣) |
19日午前 | 水俣現地見学 |
午後 | 昼食後懇談会 水俣病事件訴訟の労苦の話など 水俣病訴訟弁護団から弁護士(予定) |
熊本宿泊予定(弁護団との交流会予定) |
3月20日午前 | 第1セッション 「公害被害者救済はどこまで来たか」 |
基調報告 淡路剛久教授 |
午後 | 第2セッション 「公害環境訴訟で直面する問題と戦術」 |
中国弁護士 訴訟事例報告 韓国弁護士 参加があれば? 日本弁護士 コメントと質疑 |
午後 | 第3セッション |
「紛争処理・被害者救済制度の課題と展望」 中国 行政制度の対応 中国 立法機関の対応 |
夜 | レセプション |
3月21日午前 | 総合討論(パネルディスカッション) |
午後 | 公害弁連総会(熊本学園大学) |
| |
中国側からの参加予定者 | 公害被害者法律援助センター(3)・学者(4)・弁護士(2)・裁判官(1)・行政官(1)・立法担当責任者(1)・環境医学専門家(1)・汚染被害者(1)・新聞記者(1) |
通訳 | 逐次通訳(日・中) 韓国語の通訳は用意しない。 |
※ 発言原稿を作成する。 |
3、各地の弁護団・被害者の大勢の参加を呼びかけます。
今回の企画は、通訳の都合で、韓国語の準備は環境会議ではしませんが、韓国からの参加者も予定されており、公害環境問題の処理と、被害者との交流という面で重要な企画です。
この企画にゆっくりとツアーを組んで公害弁連総会までお付き合いください。
少なくとも、不知火海の新鮮な魚はもちろん馬刺しと球磨焼酎で大歓迎します。
第33回公害弁連総会にご参加を
事務局長 西村隆雄
本年度は、川辺川利水訴訟高裁判決、圏央道あきる野明渡裁決執行停止決定での画期的な勝利に象徴されるように、環境破壊の大型公共事業見直しに向けたたたかいが精力的に取り組まれた1年となりました。
こうしたたたかいの前進を踏まえて、下記のとおり、第33回公害弁連総会を開催します。
今回は昨年12月をもって審尋がうち切られ、まさに公弁連総会の日程に相前後して仮処分決定が出されようとしている「よみがえれ!有明海訴訟」をめぐって、提訴以来1年余の闘いを振り返り、今後の展望を語り合うシンポジウムをあわせて開催します。また総会に先立って、別報のとおり第2回環境紛争処理・日中ワークショップ熊本が開催されます。 あわせて是非ご参加いただきますようお願いします。
記
◆ | 3月21日(日) | 午後1時半〜3時 シンポジウム「よみがえれ!有明海訴訟 処分決定を受けて」 |
午後3時〜4時半 第33回公害弁連総会 |
場所:熊本学園大学 4号館412号教室 熊本市大江2−5−1 TEL.096-364-5161 |
◆ | 3月19日(金)〜 3月21日(日) | 第2回環境紛争処理・日中ワークショップ熊本 |
※ 交通案内等は
熊本学園大学
《アクセスマップ》のホームページをご覧ください。